派遣における抵触日の意味とは?期間制限以降の対応についても解説
「派遣社員として働き始めたけど、抵触日って何?」
「もうすぐ3年の派遣期間が終わるけど、抵触日を過ぎても働けるの?」
「派遣期間が延長になったけど、抵触日はどうなるの?」
初めて派遣社員として働く人や、抵触日が間近に迫っている人は、不安や疑問があるのではないでしょうか。
本記事では、派遣における抵触日の意味について、種類や意味を紹介しています。また、派遣先企業の担当者が、派遣社員の抵触日についてどう対応するのかも併せて紹介します。
抵触日について理解することで、何も知らずに派遣期間を満了して不利益を受けることのないようにしましょう。
派遣における抵触日の意味を知りたい方は、ぜひ読んでみてください。
目次
派遣における抵触日とは何か
派遣における抵触日とは、派遣期間制限が切れた翌日のことです。
派遣社員は契約期間があり、その限度は原則として最長3年です。その後、迎える抵触日までに新たな雇用契約を結ばなければ、同一企業で働き続けることができない決まりがあります。
派遣の抵触日について詳しく確認してみましょう。
なぜ抵触日が設けられているのか
派遣社員に抵触日が設けられている理由は、派遣社員を一時的な労働と位置付けているからです。
正社員に比べると、派遣社員は雇用期間や給与体系に不安定さを感じる人もいるかもしれません。そのような人がキャリアアップするために、抵触日を設け、安定した雇用へつなげるようにしています。
実際に、無期雇用の派遣社員には抵触日がありませんが、有期雇用の派遣社員には抵触日が存在するのです。
抵触日には種類がある
派遣の抵触日は2種類に分かれています。それぞれ、派遣先事業所単位の期間制限と派遣労働者個人単位の期間制限です。
どちらの契約に関しても、派遣元で無期雇用されている派遣労働者と、60歳以上の派遣労働者など期間制限について対象外の人もいます。
それでは、事業所単位と個人単位、それぞれの抵触日について説明します。実際に自分の契約がどちらか分からない場合は、登録している派遣元会社に確認してみましょう。
出典:派遣先の皆さまへ|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
事業所単位
同一の派遣先企業において、派遣労働することができる期間は、原則3年が限度です。事業所単位の抵触日は、同一企業で働いていた場合、3年を限度として迎える契約最終日の翌日を指します。
ただし、3年未満の契約満了日が定められていた場合は、契約満了日の翌日が事業所単位の抵触日です。
個人単位
同一の派遣労働者を、派遣先企業の同一組織において、受け入れることができる期間の限度は3年です。個人単位の抵触日は、同一組織内での3年を限度として迎える契約最終日の翌日を指します。
同一組織とは、主に企業内の部署や課のことです。そのため、同一企業内であっても部署や課を移動すれば、同一派遣労働者との契約を交わすことができます。
ただし、事業所単位の抵触日が先に到来する場合は、個人単位の抵触日よりも前に、派遣期間の期限が到来するため注意が必要です。
事業所単位と個人単位の派遣期間制限はどちらが優先?
事業所単位と個人単位では、派遣期間の制限は事業所単位が優先です。
基本的には、個人単位の派遣期間制限は、事業所単位抵触日にかかわらず、派遣として就業を開始した日から3年です。ただし、個人単位の前に事業所単位の契約があった場合、事業所単位の抵触日までしか同一企業内で働くことができません。
この場合、個人単位の期間制限まで勤務を希望する場合は、事業所単位の契約を延長する必要があります。また、基本的に延長の措置は派遣社員個人では行うことはできず、派遣先の会社が対応します。
改正派遣法施行日以前の契約が残っているケースではどうなる?
改正派遣法施行日以前の契約が残っているケースでは、施行日後の契約更新時に新たな法が適用される措置をとっています。
改正派遣法が施行された2015年に、事業所単位と個人単位という契約期間(どちらも原則3年)が設けられました。
改正派遣法が施行される前に派遣契約を締結していたとしても、無期契約でない限り、今現在も改正前の契約が残っている人はほとんどいないのではないでしょうか。
そのため、改正派遣法以後いつ契約更新をしたか、事業所単位と個人単位のどちらで契約しているのか分からない人は、雇用契約書や就業証明書などの書面を確認してみましょう。
どちらも手元にない場合は、派遣元の会社へ直接確認するのがおすすめです。
出典:平成27年労働者派遣法改正法の概要|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
抵触日には通知義務がある
派遣における抵触日には、通知義務があります。
この抵触日の通知義務は、書面の交付等で行うことが定められています。書面には電子メールやFAXも含まれており、基本的に、抵触日の通知が口頭で行われることはありません。
それでは、抵触日の通知義務について細かく確認してみましょう。
出典:口頭で抵触日を通知?|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
派遣先企業から派遣元会社へ通知する
抵触日は、派遣先企業から派遣元会社へ通知する義務があります。
基本的に、個人単位の抵触日は派遣元の会社でも分かりますが、事業所単位の抵触日は派遣先企業しか分からないという事情があります。そのため、抵触日の通知は、派遣先企業から行うのが基本です。
通知のタイミングと通知方法
実際に抵触日の通知が行われるタイミングは、派遣契約を締結する前です。
派遣先となる会社が、派遣元の会社に対し事業所抵触日を通知します。その通知方法は書面、または書面データを添付した電子メールです。直接、電子メールに記載して通知する場合もあるでしょう。
このように、抵触日をあらかじめ書面等で交付することを、派遣法施行規則で定めているため、口頭で通知することはありません。
出典:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律施行規則 | e-Gov法令検索
派遣元会社から派遣社員へ通知する
抵触日は、派遣元の会社から派遣社員へ通知されます。
抵触日は契約締結前に、派遣先から派遣元への通知が義務付けられています。その後、派遣元の会社から派遣社員へ通知されるのが一般的と言えるでしょう。
派遣の抵触日は、雇用契約書に記載されていたり、就業条件明示書に記載したりするなどの方法で通知されますが、派遣会社によって違うため、どのように通知されるか確認しておきましょう。
抵触日を迎えたらどうなる?
抵触日を迎えたら、原則その日から同一企業の同一部署で働くことはできません。抵触日については法律で定められているため、きちんと理解しておきましょう。
ただし、抵触日を迎えることは、仕事を完全に失ってしまう日というわけでもありません。抵触日を迎えたらどうすれば良いのか、対応方法をご紹介します。
同じ派遣先の別の課に移る
抵触日を迎えても同じ会社内で働きたい場合は、別の課へ異動すると良いでしょう。今まで所属していた課で抵触日を迎えていても、別の課へ異動すれば問題なく契約を交わすことができます。
ただし、これは個人単位の抵触日の場合です。事業所単位の抵触日を迎えていた場合は、事業所単位の契約を延長する必要があります。また、抵触日前に異動できるかどうかは派遣先企業が合意する必要があり、必ずしも希望が通るわけではないため、早めに相談すると良いでしょう。
別の派遣先を探す
抵触日を迎えることを、別の派遣先へ転職を考える機会と捉えるのも良いでしょう。
派遣先が変われば新たな雇用関係を結ぶため、抵触日はリセットされます。今まで働いたスキルを活かしてキャリアアップをはかるのもおすすめです。また、今までとは違う職種へチャレンジすることもできます。
派遣先で直接雇用してもらう
抵触日をきっかけに、派遣先で直接雇用してもらえる場合があります。
派遣先としては、新人を新たに雇うより、業務を理解している人を雇い続ける方がメリットがあるため、抵触日前に直接雇用の打診をされたら今後も働ける可能性が高いでしょう。
ただし、直接雇用は派遣先と派遣社員の合意がなければ行われません。抵触日後に転職を考えている場合は、正直に申告しておきましょう。
派遣元で無期雇用の契約をする
派遣先で直接雇用されなくても、派遣元で無期雇用契約を結ぶと、抵触日後も同一企業で働くことができます。
ただし、派遣元で無期雇用の契約には条件があります。元の有期労働契約が更新されて通算5年を超えたときに、無期雇用契約を結ぶことができます。これは、派遣社員として働いている人の申し込みが必要です。
無期雇用契約を希望する場合は、早めに派遣元の会社へ伝えておきましょう。
派遣先の企業が行う対応
派遣社員が抵触日を迎えるにあたって、派遣先の企業も抵触日が来ることを理解しておかなければなりません。
ここでは主に、派遣期間の制限以降に、その派遣社員を継続して雇い入れたい場合に必要な対応を紹介します。
派遣期間制限を延長する場合
派遣期間制限を延長する場合は、その契約が事業所単位か個人単位かで対応が変わります。
派遣先が期間制限の3年を超えて派遣社員を雇い続けたい場合は、期間制限を延長する手続きが必要です。そのためには、派遣先の労働組合等からの意見を聴く必要があります。
そして、この意見を聴くために必要な定数は過半数が必要とされています。
出典:派遣先の皆さまへ|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
意見聴取は事業所ごとに行う
派遣期間制限の3年を超えて雇い入れるための意見聴取は、その事業所ごとに行う必要があります。
意見聴取は、抵触日の1ヶ月前までに行うようにしましょう。また、意見聴取の結果、延長することが認められないと決まった場合は、その旨を派遣社員に説明することを忘れないようにしましょう。
抵触日後も同じ派遣社員に働いてほしい場合
抵触日後も同じ派遣社員に働いてほしい場合は、派遣社員に対して直接雇用の申し込みをする必要があります。
また、抵触日後に転職を考えている派遣社員もいることを想定し、なるべく早い段階で直接雇用を打診するのがおすすめです。
この直接雇用は、雇用形態も含めて派遣社員と相談できます。必ずしも正社員雇用というわけではありませんので、パートや契約社員など双方が合意する契約しましょう。
派遣期間制限のクーリング期間とは?
派遣期間制限のクーリング期間は、事業所単位と個人単位の両方とも3か月と1日です。
派遣として働ける期間の3年間を経過したのち、3か月と1日を空けて再雇用すると、派遣期間の制限をリセットすることができます。それにより、また新たに3年間の制限を設けて雇い入れることができるのです。
ただし、契約延長の措置などを取らずにクーリング期間を空けて再契約を繰り返すのは指導対象となる可能性があるため、クーリング期間は正しく使用しましょう。
出典:平成27年労働者派遣法改正法の概要|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
労働者派遣法についての知識
労働者派遣法とは、正社員に比べると、雇用期間や給与に関して不安定な雇用形態の派遣社員を守るために定められています。
不当に不利益な扱いを受けないよう、また、不安定な雇用をしないための法律です。
出典:平成27年労働者派遣法改正法の概要|厚生労働省・都道府県労働局
許可基準を満たした事業所だけが派遣事業に従事できる
誰でも簡単に派遣事業ができるわけではありません。必ず、許可基準を満たした事業所だけが派遣事業を行うことができます。
その許可基準の中には、派遣労働者のキャリア形成支援制度を有することも掲げられています。
派遣会社に登録すると、スキルアップのための講習が受けられる場合もあります。このような教育体制が整っている事業所が多いのは、キャリア形成を支援するためなのです。
出典:平成27年労働者派遣法改正法の概要|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
派遣労働者が同じ組織で働ける期間制限は上限3年間
派遣労働者が同じ組織で働ける期間の制限は、3年間を上限としています。この期限は、基本的には事業所単位と個人単位のどちらも同じ3年間です。
ただし、個人単位の場合は課を異動することにより、3年を超えて同一企業で働くことができます。また、事業所単位の場合は延長のための意見を聴く措置などがあります。
出典:平成27年労働者派遣法改正法の概要|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
キャリアアップ措置の義務化
派遣会社は、派遣社員として働く登録スタッフに対して、キャリアアップ措置の義務化が行われています。これはキャリア形成支援制度によるもので、段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定める必要があります。
また、キャリアアップのためのコンサルティング相談窓口の設置も必要です。このように、派遣社員が安心して働ける環境を作ることも、派遣会社の大切な役割と言えます。
出典:平成27年労働者派遣法改正法の概要|厚生労働省・都道府県労働局(PDF)
派遣の抵触日について理解しておこう
いかがでしたでしょうか。今回の記事では、派遣の抵触日の意味や、期間制限後の対応について紹介しました。
雇用期間に限りがある契約でスタートする派遣社員ですが、無期雇用契約への転換や、直接雇用の可能性もあります。長く続けたいと思える企業に出会ったら、期間制限以降も働き続けられるように、派遣元・派遣先ともに相談してみましょう。
派遣の抵触日についてきちんと理解をして、今後のキャリアアップに活かしてみてはいかがでしょうか。
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
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