「リスキリングという言葉を聞く機会が増えてきたけれども、そもそもリスキリングとは何?」
「今勤めている会社での取り組みのほかに、個人でリスキリングについて取り組んでおくべき事柄はある?」
など、リスキリングについてこのような疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか。
本記事ではリスキリングについての解説のほかに、政府や企業での取り組みについて触れ、個人で取り組むべき事項についてご説明します。リスキリングに取り組んでみようと考えている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
「リスキリング」とは?
「リスキリング」の意味
「リスキリング」とは一般的に「今の職業で必要とされる大きなスキルの変更、追加に対応するため、または新しい職業に就くために必要な新しいスキルについて学び、スキルを獲得すること」を指します。
ここで大切なことはリスキリングとはいわゆる「学び直し」ではなく「今後も社会において、仕事を通じて価値を創出し続けるために必要なスキルを身に付ける」ということです。
リスキリングに似た言葉
「アップスキリング」
今就いている職業の延長線上においてスキルアップにつながるスキルを獲得、向上させること
「リスキリング」
今後の社会において求められると思われるスキルを獲得していくこと
「アウトスキリング」
離職等、社外へ出る可能性がある人員を対象に、今後の就職に役立つニーズの高いスキルの獲得を支援する活動
「リカレント教育」
リスキリングは基本的に企業に就業中の従業員が、今後の業務に役立てるためのスキルを比較的短期間に学ぶことに対して、リカレント教育とは、業務に直結しない分野、項目についても大学等で長期間の教育を反復して受けることを指す、という特徴があります。
行政・企業によるリスキリングへの取り組み
「リスキリングの支援に5年で1兆円」
第210回臨時国会の中で「リスキリングの支援に5年で1兆円を投じる」と表明がありました。
さまざまな助成金制度も策定されているため、今後企業によるリスキリングへの取り組みが拡大されていくと予想されています。
ただ、企業によるリスキリングへの取り組みについては、企業の規模によって主目的、取り組んでいく課題に違いがあるようです。
大企業における取り組み
目的
- 定年の延長の傾向に伴う人員再配置の検討のため
- ベテラン層の業務、「働くこと」へのモチベーションアップのため
大企業においては特にベテラン層のモチベーションアップ、人材としての活性化が課題となっています。キャリアカウンセラーなどの専門家の講座を受講して今後のキャリアプランについて考えていく機会を設ける企業もあります。
中小企業における取り組み
目的
- 個人、ひいては企業全体の生産性の向上が最優先
生産性の向上のために注目されるのはITリテラシー、スキルの向上です。前提として企業内でのDX推進について計画され、その内容に沿ったスキルの獲得が優先となり、個々人のキャリアプランの策定、キャリアの専門家によるコンサルティングについては実施されるケースが少ないようです。
個人はどのようにリスキリングに取り組むべきか
現在の個々人でのリスキリングへの取り組みの状況についてですが、各種調査でも正社員でリスキリングに取り組んだ経験がある方は大体3割前後にとどまっているようです。
ただ、社会情勢の変化によりこれまでの働き方やライフプランの考え方にも変化が必要と言われています。「80歳現役社会」という言葉も用いられるようになってきました。
働いている年齢が引き上げられていくと、これまでのスキルだけでは社会で活躍していくことが難しくなってきます。
その中でも、これからもさらに進んでいく各種業務のデジタル化、DX推進への対応のためにIT系スキルについて注目が集まりがちですが、IT系にとどまらない各業種、職種においてもリスキリングは注目されています。
今後の社会において安定して働くために~VUCA(ブーカ)の時代~
「VUCA(ブーカ)の時代」と言う言葉をご存知でしょうか。
V=Volatillity「変動性」:加速するテクノロジーの進化に伴ってさまざま変化が起こるスピードが速く、その内容が質・量ともに大きくなっている状況のことを指します。将来の予測が難しいことを不安に思っている方も多いのではないでしょうか。
U=Uncertainty「不確実性」:環境や政治による制度が不確実であり、自然現象や未知のウィルスの蔓延などもその不確実性を助長している状況を指します。こちらも将来の予測をさらに難しくしています。
C=Complexity「複雑性」:経済のグローバル化に伴い、従来日本国内で成功していたビジネスモデルが海外では成果に結びつかないという場面が増加するなど、各国の法制度や文化などの要因が複雑な要因となり、ビジネス、各人の仕事が複雑化している状況を指します。
A=Ambiguity「曖昧性」:上記してきました変動性・不確実性・複雑性が複合的に絡み合うことで、さまざまな事象の因果関係がわかりづらく、曖昧になってきています。このことにより従来良いとされてきた、成功事例なども今後においてはあてはまらない、という曖昧さが増えていく状況であることを指します。
このような「VUCAの時代」は、一言で表すと「変化が大きく、先行きの見通しが立ちづらくなっている時代」と言うことができます。
そのため、私たちにはリスキリングによってどのような知識、スキルを身に付けるのか、身に付けた知識、スキルをどのように活かしていくのかの判断、それに基づく行動のスピードを上げていくという意識も必要になります。
今後の社会において安定して働くために~リスキリング以外に必要なこと~
「T字型人材」になることで自らの価値を高める
「T字型人材」とは、特定の分野において十分な知識と経験がありながらも、その他の領域についても知見を持ち合わせる人材のことです。
「T」の字の縦軸が自らの専門分野、横軸がその他の領域における知識、知見の広さを表しています。
深い専門性と、他の領域の知見を合わせ持つことによる視野の広さがあることで、さまざまな経験とそれによる知識を自らの中で融合させることで新しいアイディアを生み出すことができ、時代や状況の変化にも柔軟に対応できることができる人材として期待される存在です。
T字型人材であるためには、リスキリングや自らの学びによって得られるスキル、知識を自らの専門分野においてどのように活用、融合できるかを考えることが大切です。
まとめ~企業側から見たリスキリング~
ここまで説明してきましたリスキリングについて企業が取り組むメリットは下記です。
- 従業員それぞれが将来性あるスキルを身に付けることで社内業務の改善、効率化が見込める
- すでに自社の事業、文化を知っている従業員が取り組むことで、社内実現可能性が高い新しいアイディアが生まれる
企業においては既に継続している事業内容もあることから、新しいアイディアと既存の事業のバランスを取りながら事業を発展させていくことが必要です。
そして、従業員それぞれのスキルアップと共に、その集合体である企業の考え方、文化も時代に合わせて従来以上のスピード感を持ってアップデートさせていくことが求められていると言えるでしょう。
まとめ~個人の側から見たリスキリング~
リスキリングについて考えるとき、個人が意識するべき事項は下記です。
- 「80歳現役社会」の到来に備える必要
- 「VUCAの時代」の中で求められるスピード感
- 「T字型人材」になる
将来の長い期間に渡って活躍するためには今の企業の中のことのみを考えるのではなく、自らはどのように働き、さらにはどのような人生を送りたいのか、そしてそのために身に付けるべきスキルは何なのかを考えていく必要があります。
そのように考えると、リスキリングとは単に仕事をしていくために必要な取り組みというだけではなく、自身の人生を豊かにするものである、という観点から取り組んでいく必要があるのではないでしょうか。
初回公開日:2024年1月16日
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
株式会社エーティーエスが運営する本サイト「キャリテ」では、みなさまの「キャリア」「働く」を応援する記事を掲載しています。みなさまのキャリアアップ、より良い「働く」のために、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
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