あなたの「キャリア」「働く」を応援するメディア

produced by A.T.S Advanced Technology Service
個人事業主で所得200万円なら税金はどのくらい?計算方法や節税対策も紹介

個人事業主で所得200万円なら税金はどのくらい?計算方法や節税対策も紹介

現在、個人事業主として働いている人の中には、所得額や税額の計算方法を知りたいという人も多いでしょう。個人事業主の場合、1年間の収入や必要経費などから納税額を計算し、税務署に確定申告する必要があります。

この記事では、個人事業主が納税する主な税金の計算方法について、事業所得200万円のケースを想定して詳しく説明するとともに、それぞれの税金の納付方法や納付時期、個人事業主におすすめの節税対策などについても紹介しています。

この記事を読んで、主な税金の計算方法や納付方法などを頭に入れておくことで、確定申告から税金の納付までをスムーズに進めることができるでしょう。

個人で事業を行っている方はもちろん、これから事業をはじめようとしている方や個人事業主向けの節税対策が知りたい方は、ぜひこの記事をチェックしてみてください。

個人事業主の所得とは

個人事業主の所得とは

個人事業主が事業で得た所得のことを、事業所得と言います。事業所得の金額は、事業による総収入金額から必要経費を引いた額です。

総収入金額には、事業で得た売上金額のほか、金銭以外の経済的利益(物や権利など)の価額や、商品を自家用に消費した場合のその商品の価額、商品など棚卸資産の損失によって受け取る保険金や損害賠償金なども含まれます。

必要経費とは収入を得るために必要な費用のことで、売上原価をはじめ、事務所の家賃や従業員の給与、資産の減価償却費などが挙げられます。

出典:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁

個人事業主にかかる主な税金は?

個人事業主にかかる主な税金は?

個人事業主に関連する主な税金には、所得税・住民税・個人事業税・消費税があります。

ここでは、それぞれの税金の計算方法や納付方法を紹介します。個人事業主は基本的に税金の計算や納税も自分で行うため、一通りチェックしておきましょう。

所得税

所得税とは、事業所得や給与所得など、非課税所得を除く個人のすべての所得に対してかかる税金です。この所得税額は、すべての所得金額から所得控除額を差し引いた「課税所得金額」に税率を掛けて計算します。

所得控除は、さまざまな個人の事情を加味して税負担を調整するもので、基礎控除や扶養控除、配偶者控除、医療費控除など15種類あります。

出典:No.1000 所得税のしくみ|国税庁

計算方法

所得税は分離課税に対するものをなどを除くと、課税所得金額によって5%から45%までの7段階に区分けされています。

実際の所得税の計算では、まず、その年すべての所得金額から所得控除額を差し引き、課税所得金額を求めます。

次に、求めた課税所得金額の1,000円未満を切り捨て、その額に以下の税率を掛け、さらに控除額を差し引いたものが所得税額です。

・1,000円~1,949,000円:税率5%・控除額0円
・1,950,000円~3,299,000円:税率10%・控除額97,500円
・3,300,000円~6,949,000円:税率20%・控除額427,500円
・6,950,000円~8,999,000円:税率23%・控除額636,000円
・9,000,000円~17,999,000円:税率33%・控除額1,536,000円
・18,000,000円~39,999,000円:税率40%・控除額2,796,000円
・40,000,000円以上:税率45%・控除額4,796,000円

例えば課税所得金額が400万円の場合(4,000,000×0.2)-427,500=372,500円が所得税額となります。

出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

納付時期と納付方法

所得税の納付期限は、確定申告書の提出期限と同じ3月15日です(振替納税の場合は4月24日)。期限が土曜日・日曜日・祝日等の場合は、その翌日が期限となります。

この時、確定申告書を提出しても、税務署から納付書や納税通知書等は送付されないため、自分で申告した通りに納付する必要がある点に注意しましょう。

所得税の納付方法には、以下のものがあります。

・電子納税(e-Tax)によるダイレクト納付・インターネットバンキング納付
・振替納税(口座振替による納税)
・クレジットカード納付(専用のWeb画面から納付)
・コンビニ納付(納付金額が30万円以下の場合のみ、QRコードかバーコード付納付書が必要)
・窓口納付(金融機関または税務署の窓口)

また、期限までに全額納付できない場合、期限までに納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残額の納付を5月31日まで延長できます(延納)。ただし、この場合の延納期間中は、年0.9%の利子税がかかることに注意しましょう。

なお、一定の基準を満たし、かつ前年分の所得金額や税額などを基に計算した「予定納税基準額」が15万円以上である場合、その年の所得税などの一部をあらかじめ納付する必要があります(予定納税)。

予定納税が必要な場合は、6月15日までに税務署から書面で通知されます。納付は2期に分けて行い、第1期分の期限は7月31日、第2期分の期限は11月30日です。

出典:【税金の納付】|国税庁

出典:No.2040 予定納税|国税庁

住民税

住民税(個人住民税)は道府県民税と市町村民税の総称で、住んでいる道府県と市区町村に納付する税金です。

道府県民税と市町村民税は、一括して市区町村に納付されます。その後、各市区町村が、道府県に道府県民税を払い込むという仕組みになっています。

出典:個人住民税|総務省

計算方法

住民税には、主に所得に関わらず決まった額を納付する「均等割」と、所得に応じて納付額が決まる「所得割」があります。

均等割の額は5,000円(市町村民税3,500円+道府県民税1,500円)です。

所得割の額は、前出の課税所得金額に10%(市町村民税6%+道府県民税4%)を掛けた後、税額控除(配当控除や寄付金税額控除、調整控除など)を差し引いて求めます。

基本的には、均等割の額と所得割の額を合計した額が住民税の税額です。

なお、道府県民税には均等割と所得割のほかに、預貯金の利子に課税される「利子割」、株式の配当などに課税される「配当割」、株式の譲渡益などに課税される「株式等譲渡所得割」もあります。

出典:個人住民税|東京都主税局

納付時期と納付方法

住民税の納付時期は4期に分かれており、第1期は6月30日、第2期は8月31日、第3期は10月31日、第4期は1月31日が期限です。期限が土曜日・日曜日・祝日等の場合は、その翌日が期限となります。

住民税は、金融機関または役所の窓口やコンビニで納付できるほか、口座振替やクレジットカード、スマホ決済アプリ、Pay-easy(ペイジー)に対応している金融機関のATMやインターネットバンキングでの納付も可能です。

出典:住民税を個人で納める方(普通徴収)|江戸川区役所

個人事業税

個人事業税は、個人で営む事業のうち、地方税法などで定められた業種(法定業種)の事業にかかる税金です。

法定業種には第1種事業(物品販売業・運送業・飲食店業など37種)、第2種事業(畜産業・水産業・薪炭製造業)、第3種事業(医業・弁護士業・美容業など30種類)の計70種類があり、ほとんどの事業が該当します。

出典:個人事業税|東京都主税局

計算方法

個人事業税の税額は、1年間の事業から生じた事業所得と不動産所得から各種控除を差し引き、それに税率を掛けて求めます。

税率は、第2種事業が4%、第3種事業のうち、マッサージ・あんま・または指圧・きゅう・はり・柔道整復などの医業に類する事業と装蹄師業が3%、その他の事業は5%です。

事業所得を求める際には、青色申告特別控除額や、所得税の事業専従者給与(控除)額を差し引かないように注意しましょう。確定申告書などを記入する際に計算した額を使う場合は、これらの額を加えてから計算します。

各種控除には「個人の事業税の事業専従者控除」「繰越控除」「事業主控除」があります。

個人の事業税の事業専従者控除は、事業主と生計をともにする親族が専らその事業に従事した際に、その給与を必要経費として控除するものです。控除額は、青色申告の場合は給与支払額の全額、白色申告の場合は50万円(配偶者の場合は86万円)までとなります。

繰越控除は、過去3年間に事業の所得が赤字になったり、事業用資産が被災したりした場合などに、その損失額を控除できるものです。

事業主控除では、年間290万円が控除されます。営業期間が1年未満の場合は、290万円を12で割り、事業を行った月数を掛けた額が控除額となります。

出典:個人事業税|東京都主税局

納付時期と納付方法

個人事業税は納付時期が2期に分かれており、第1期は8月31日、第2期は11月30日が納期限です。期限が土曜日・日曜日・祝日等の場合は、その翌日が期限となります。

また、所得税の修正申告をした場合や事業を廃止した場合などの際には、上記とは別に納税通知書に記載された納期限までに納付する必要があります。

納付方法には、金融機関または都道府県税事務所の窓口やコンビニのほか、口座振替やクレジットカード、スマホ決済アプリが利用できます。また、Pay-easy(ペイジー)に対応している金融機関のATMやインターネットバンキングでの納付も可能です。

出典:個人事業税|東京都主税局

消費税

消費税は、商品や製品の販売、サービスの提供などといった、対価を得て行う取引に対してかかる税金です。商品などの価格に上乗せされる形で消費者が負担し、納税義務者である事業者が納付します。

消費税はほとんどの取引に対して課されますが、土地の譲渡や貸付け、利子や保険料、商品券やプリペイドカードの譲渡、お産の費用など非課税となっている取引もあります。

なお、消費税が課される取引には、あわせて地方消費税も課税されます。地方消費税の税額は、消費税額の78分の22です。

消費税の税率は10%(消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)ですが、「酒類・外食を除く飲食料品」と「週2回以上発行される新聞の定期購読契約料」には軽減税率が適用され、8%(消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)となります。

個人事業者の場合、基本的に一昨年の課税売上高が1,000万円を超えると納税義務者(課税事業者)となります。課税事業者の条件を満たさない場合は免税事業者となり、その年の納税義務が免除されますが、その場合でも任意で消費税を納付することが可能です。

出典:消費税のしくみ|国税庁

計算方法

消費税は、課税期間内における課税される取引の売り上げにかかる消費税額から、課税される仕入れになどにかかる消費税額を控除して計算します。

消費税率には複数の税率があるため、計算の際には、税率ごとに区分しておく必要があることに注意しましょう。課税される仕入れになどにかかる消費税額の控除には、通常は帳簿か請求書の保存が必要です。

なお、簡易的な計算方法としては、課税される売り上げにかかる消費税額に業種に応じた一定の「みなし仕入率」を掛けた金額を、課税される仕入れなどにかかる消費税額とみなすことも可能です。

業種ごとのみなし仕入れ率は、以下の通りです。
・第1種事業(卸売業):90%
・第2種事業(小売業、食料品を扱う農林漁業):80%
・第3種事業(食料品以外を扱う農林漁業、建設業、製造業など):70%
・第4種事業(飲食店業など):60%
・第5種事業(運輸・通信業、金融・保険業、サービス業):50%
・第6種事業(不動産業):40%

出典:消費税のしくみ|国税庁

納付時期と納付方法

個人事業者の場合、消費税の申告・納付期限は3月31日(土曜日・日曜日・祝日等の場合は翌日)です。

そのほかに、1年の消費税額が48万円を超え400万円以下の場合は年1回、400万円を超え4,800万円以下の場合は年3回、4,800万円を超える場合は年11回、中間申告と納付をする必要があります。

納付方法については、金融機関または税務署の窓口で納付するほか、電子納税(e-Tax)・口座振替・コンビニ納付・クレジットカード納付も利用できます。

出典:消費税のしくみ|国税庁

出典:申告と納税|国税庁

事業所得200万円の個人事業主の税金を計算してみよう

事業所得200万円の個人事業主の税金を計算してみよう

ここからは、個人事業主にかかる税金の計算をシミュレーションしてみましょう。

ここでは具体例として、1年の事業所得200万円で、確定申告を青色申告で済ませて65万円の特別控除の適用条件を満たしており、所得控除は基礎控除48万円のみという条件で計算します。

所得税

まずは、所得税の計算です。事業所得200万円から青色申告特別控除65万円と基礎控除48万円を引くと、課税所得金額は87万円(200万-65万-48万)となります。

課税所得金額が87万円の場合、所得税の税率は5%で控除額はないため、所得税額は43,500円(87万×0.05=4.35万)です。

出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

住民税

住民税の計算では前述の通り、所得に応じて課税される所得割の額と、所得によらず一定の額が課税される均等割の額を合計して求めます。

ここでは、先に所得割の額を計算します。

所得割

まず、所得割の額を求めましょう。課税所得金額87万円の場合、住民税率10%を掛けて87,000円(87万円×0.1=8.7万円)となります。

次に、ここから調整控除の額を差し引きましょう。合計課税所得金額が200万円以下の場合、人的控除額の差額の合計額か、合計課税所得金額のうち小さい方の5%が控除額となります。

具体例では、適用される人的控除は基礎控除のみのため、人的控除額の差額の合計額は5万円となり、こちらが適用されます。

そこで、87,000円から2,500円(5万円×0.05=0.25万円)を差し引き、所得割の額は84,500円となります。

出典:住民税の計算方法|板橋区公式ホームページ

均等割

均等割の額は、前述の通り所得額によらず一定で5,000円です。

計算例では所得額が84,500円のため、均等割の5,000円を加え、89,500円が最終的な住民税の額となります。

出典:住民税の計算方法|板橋区公式ホームページ

消費税ならびに個人事業税

消費税の納付義務が発生する条件は、課税売上高が1,000万円を超えることです。具体例では課税売上高やその内訳を設定していないため、ここでは計算を省略します。

実際の計算では、消費税率には10%と8%の2種類があるため、税率ごとに区分して計算する必要がある点に注意しましょう。

個人事業税では、290万円の事業者控除があるため、事業所得290万円以下の場合は基本的に税額がゼロとなります。具体例では事業所得200万円のため、個人事業税の税額はゼロです。

出典:消費税のしくみ|国税庁

出典:個人事業税|東京都主税局

個人事業主におすすめの節税対策

個人事業主におすすめの節税対策

個人事業主が支払う税金は、控除を受けられる制度を利用するなどの方法で、税負担を軽くすることができます。同じ収入でも、このような節税対策を積極的に利用するかどうかで、支払う税金に大きな差が出ることもあるでしょう。

ここでは、個人事業主が節税対策として利用できる制度などを5つ紹介します。

  • iDeCo
  • 国民年金基金
  • 青色申告特別控除
  • 小規模企業共済
  • ふるさと納税

iDeCo

iDeCo(イデコ)は「個人型確定拠出年金」とも言い、自分で拠出した掛金を、自分の責任で運用して資産を形成する年金制度です。基本的に国民年金の被保険者であれば加入でき、60歳になると老齢給付金を受け取れます。

iDeCoには「掛金が全額所得控除される」「運用益が非課税で再投資される」「老齢給付金が退職所得控除または公的年金等控除の対象になる」という税制上のメリットがあるため、老後に備えられると同時に節税対策にもなるでしょう。

出典:iDeCoの特徴|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】

国民年金基金

国民年金基金は、個人事業主と会社員などの人との年金額の差を解消するために創設された公的な年金制度で、国民年金の第1号被保険者であれば加入できます。

老齢年金のほかに遺族一時金が受け取れるため、自分に万一のことがあった場合のための備えにもなる制度です。

国民年金の掛金は、全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の節税対策になります。

出典:加入条件・資格|国民年金基金連合会

青色申告特別控除

個人事業主は事業所得があるため、確定申告では青色申告制度を利用できます。青色申告の場合、原則的に正規の簿記による帳簿を付ける必要があるなど、通常の白色申告に比べて手間はかかるものの、さまざまな税制上の優遇を受けられるというメリットがあります。

その1つが青色申告特別控除です。

青色申告特別控除では、一定の要件を満たすことで所得金額から55万円または65万円の控除を受けることが可能です。

55万円の控除を受けるためには、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)で取引を記帳し、それに基づいて作成した貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して、期限までに確定申告をする必要があります。

さらに、上記の要件を満たしたうえで、電子帳簿保存を行っているか、e-Taxで確定申告をしていれば、控除額が65万円になります。

出典:No.2070 青色申告制度

小規模企業共済

小規模企業共済は、国の機関である中小機構が運営している小規模企業の経営者や役員、個人事業主向けの共済制度です。共済金は退職・廃業時に受け取るため、個人事業者などのための退職金制度とも言えるでしょう。

小規模企業共済の掛金は、全額が所得控除の対象です。さらに、共済金は一括受け取りなら退職所得、分割受け取りなら公的年金等の雑所得として扱われるため、高い節税効果が期待できるでしょう。

出典:制度の概要|小規模企業共済(中小機構)

ふるさと納税

ふるさと納税は「納税」という言葉がついているものの、実際は任意の自治体(都道府県や市区町村)への寄付制度となっています。

ふるさと納税では、原則として寄付金額から自己負担額2,000円を差し引いた全額が控除の対象となります。さらに、寄付をした自治体から返礼品などが受け取れるため、結果的に寄付金額以上のリターンが期待できるでしょう。

出典:ふるさと納税のしくみ|総務省

個人事業主が所得に応じて支払う税金の種類と計算方法を覚えておこう

個人事業主が所得に応じて支払う税金の種類と計算方法を覚えておこう

個人事業主が支払う主な税金には、所得税・住民税・個人事業税・消費税があります。

個人事業主は自分で確定申告をして納税する必要があるため、それぞれの税金の計算方法を知っておくことは必須と言えるでしょう。

納付が納期限に遅れたりすることのないよう、本記事を参考にして、それぞれの税金の納付方法や納付時期について、しっかり把握しておきましょう。

初回公開日:2024年2月13日

監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】

株式会社エーティーエスが運営する本サイト「キャリテ」では、みなさまの「キャリア」「働く」を応援する記事を掲載しています。みなさまのキャリアアップ、より良い「働く」のために、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。

新着記事