はじめに
「この人、経歴は豊富だけど、正直なところ何をやってきたのか伝わらない…」
これは、私が派遣登録面談を通して何度も感じてきた“もったいない”ケースです。
せっかくのスキルや実績も、職務経歴書でうまく表現できていなければ、その価値は伝わりません。
そこで本記事では、職務経歴書を「伝えるためのツール」として見直す視点をお届けします。
派遣登録担当として実際に効果を感じた“伝わる書き方”の工夫も交えながら、実践的にご紹介します。
また、職種別に押さえておきたいキーワードや、表現のコツも具体的に解説。
最後には、読み手の心に届く職務経歴書に整えるためのステップを整理しました。
目次
1. サマリーは“簡潔に詳しく”が鉄則
職務経歴書の最上部にある「サマリー」は、採用担当者が最初に目を通す重要な項目です。
まず第一に、強みや経験をわかりやすく、そして簡潔に伝えることが大切です。
サマリーの構成例:
- 経験職務概要(例:「RPAツールを用いた業務自動化に3年従事」)
- 活かせる経験・知識(例:「業務改善提案力/クライアント折衝経験」)
- 使用ツール一覧(例:「UiPath、Power Automate、Excel VBA」)
文体は40文字前後でまとめ、主語を省略した箇条書きが最も効果的。
数字「3年従事」やツール名称「UiPath」など具体性を持たせること。
結果として視認性が高まり、読まれやすくなります。
具体的な記入例:
■経験職務概要
業務自動化の設計・開発・運用保守に約3年間従事。
主にRPAツール(UiPath、Power Automate)を活用し、バックオフィス部門の定型業務を効率化。
業務ヒアリングによる要件定義から実装、社内展開まで一貫して手がけ、これまでに15本以上のロボットを開発・導入しました。
■活かせる経験・知識
- 業務改善の提案力:業務ヒアリングを通じた現状分析と課題抽出を行い、ツール導入に留まらない改善施策の立案を経験
- クライアント折衝経験:社内関係部署や外部ベンダーとの要件調整・導入支援を行い、複数部門を巻き込んだプロジェクトを推進
- ドキュメント作成・教育:操作マニュアルの整備や、非エンジニア向けの操作研修を通じたナレッジ展開を実施
■使用言語(ツール)
分類 | ツール名 | 活用内容・補足 | 経験年数 |
---|---|---|---|
RPA | UiPath、Power Automate | ワークフロー設計、ロボット開発、Orchestratorでの運用管理 | 約3年 |
スクリプト | Excel VBA、PowerShell | データ加工、ファイル操作、自動通知など | 約2年 |
業務基盤 | SharePoint、Teams、Outlook | 情報共有、通知連携、チーム連携業務 | 約3年 |
ドキュメント | Excel、PowerPoint、Word | 操作マニュアル・業務フロー図・提案書の作成 | 約5年 |
2. 登録担当としての現場から:面談で感じた“伝わるキャリア”とは?
私自身、登録面談を担当する中で数多くのエンジニアの方々とお話してきました。
中でも印象的だったのが、あるRPAエンジニアの方とのやり取りです。
その方の職務経歴書には、確かに経験内容が書かれていました。
しかし、「どのフェーズで何を担当したのか」が曖昧で、魅力が十分に伝わってこなかったのです。
そこで、プロジェクトの流れや立ち位置を詳しくヒアリングしていくと、
実はチームの調整役としてプロジェクト成功に大きく貢献していたことがわかりました。
こうした実績は、サマリーに明確に記載されていると、企業からの評価が一段と高まります。
この経験から感じたのは、「何をしたか」よりも「どう関わったか」を丁寧に伝える重要性です。
3. 職種別:職務経歴書に盛り込むべきキーワード
職種によって、強調すべきポイントは異なります。以下を参考に、内容を充実させてみましょう。
■ RPAエンジニア
- 自動化対象業務のヒアリング・業務分析
- 使用ツール(UiPath/Automation Anywhere/WinActorなど)
- シナリオ作成の工夫点、開発・運用フェーズの分担
■ ヘルプデスク/サポート
- 問い合わせ件数(月間○件)/対応満足度
- ITILベースの対応経験(インシデント管理/ナレッジ作成)
- OS/ソフトウェア環境(Windows/Mac、Active Directoryなど)
- 利用ツール:ServiceNow(チケット管理)、Notion(マニュアル作成・修正)
- 問い合わせ手段:対面/Web会議/電話などの対応経験
■ PM(プロジェクトマネージャー)
- プロジェクト規模(人数・期間・金額)
- 担当フェーズ(要件定義~リリース)/リスク管理の経験
- 顧客折衝/ステークホルダー調整
■ システムエンジニア(SE)
- 使用言語(Java/Python/PHPなど)とフレームワーク
※例:Java(Spring)、PHP(Laravel)など、使用言語に応じて記載 - フェーズ経験:要件定義/設計/開発/単体・結合テスト
- レビュー経験(コードレビュー/設計書レビューなど)
- ユーザーとの調整経験(業務部門やクライアントとの要件すり合わせ)
- 業務ドメイン経験(製造業/人事システム/会計領域など)
- リモート環境での対応経験
■ インフラエンジニア
- 担当領域(サーバ/ネットワーク/クラウド/仮想化など)
- 使用ツール・技術(VMware、AWS、Azure、Zabbix、Terraformなど)
- 障害対応・監視設計・キャパシティ管理の経験
- 構築~運用・保守までのフェーズ経験
- ドキュメント整備やマニュアル作成の経験(構築手順書・運用手順書など)
- チーム連携/現場との折衝経験/リモート環境下での対応実績
4. 実績を“見せる”工夫:表組みの活用
文章だけでは伝わりにくい経歴も、表にまとめると一目瞭然になります。
以下のように、プロジェクト単位で整理することをおすすめします。
期間 | 企業名(派遣先) | 業務内容 | 使用ツール | メンバー数/役割 |
---|---|---|---|---|
2022/4~2023/3 | 株式会社ABC(○○証券) | RPA導入支援(業務分析~シナリオ作成) | UiPath、Excel VBA | 5名/サブリーダー |
2021/1~2022/3 | 株式会社DEF(流通業) | ECサイト改修(設計~テスト) | PHP、Laravel、Git | 6名/SE |
上記のように、担当フェーズや成果を視覚的に整理することで、応募先企業に対する訴求力が高まります。
5. なぜこの構成が有効なのか?
採用する側の視点に立ってみると、「どんな現場でどんな役割を担ってきたのか」がひと目で伝わる構成は、非常にありがたいものです。
加えて、エンジニア職はプロジェクトによって求められるスキルが変わります。
そのため、できるだけ具体的に経歴を記載することで、ミスマッチの予防にもつながります。
6. 書き出しのひと工夫で“読み手を惹きつける”
成果を数字で示すことで、より説得力が増します。
例えば以下のような書き出しが効果的です。
- 「定型業務をRPAで自動化し、月間工数を30時間削減」
- 「ヘルプデスク対応の平均時間を15分短縮」
冒頭で“成果”を伝えることで、読み手の関心をグッと引き寄せることができます。
7. 応募先に合わせた“ひと手間”がカギ
どんなに完成度の高い職務経歴書でも、相手のニーズに合っていなければ意味がありません。
求人票に記載された「求める人物像」や「使用ツール」などに合わせ、内容を微調整しましょう。
例えば以下のような工夫が有効です:
- 使用ツールが一致しているなら、なるべく上部に配置
- 求める人物像が「自主性重視」であれば、自発的に動いたエピソードを加える
8. スキルシート提出用の仕立て直しを実施しています
株式会社エーティーエス(当社)では、職務経歴書で記載された内容をもとに、企業提出用のスキルシートとして仕立て直す対応も行っています。
職務経歴書には、勤務先企業の名称や業務詳細など、個人の経験を正確に記すための情報が多く含まれます。
一方、顧客企業へ提出する際には、社名・プロジェクト名などの表記を調整し、守秘義務に配慮した体裁が求められます。
そのため、以下のような観点で整備・調整を行っています:
- 社名・配属部署名を非公開表記に差し替え(例:某金融機関、製造業大手 など)
- 業務内容の機微情報を整理・抽象化しつつも、経験の本質が伝わる表現に変更
- 経験年数や使用ツールなどの構造を見直し、応募案件との親和性が明確になるように整理
提出先ごとの求められるフォーマットや情報開示レベルに応じて、“選ばれる”スキルシートに整えるサポートを行っています。
職務経歴書だけでなく、実際の選考に使われる「見せ方」までを意識した支援体制が、当社の特長です。
おわりに
夏はキャリアチェンジに最適な季節です。気温が高まるように、転職市場も熱くなります。
今こそ、自分の経験を言語化し、「伝わる職務経歴書」を整えてみましょう。
一歩踏み出すその準備が、新たな可能性へとつながります。
「あなたらしい言葉で、あなたらしいキャリアを。」

監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
株式会社エーティーエスが運営する本サイト「キャリテ」では、みなさまの「キャリア」「働く」を応援する記事を掲載しています。みなさまのキャリアアップ、より良い「働く」のために、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
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