目次
静かな緊張が、やわらいでいくまで

最初は、誰もが少し緊張していました。
会場に着いて、席に着き、前を向いてはいるけれど、どこかぎこちない。
視線を落としながら、少し落ち着かない空気。
そんななか、ゆっくりと会場に拍手が広がり、西田弘次先生が前に立たれました。
あいさつはやわらかく、言葉は穏やかで、ひとこと目から、場の空気が少し変わっていきます。
「今日は90分間、皆さんのコミュニケーション力を少しずつ“底上げ”していく時間にしましょう」
参加者のうち、何人かがそっと顔を上げたのが見えました。
その小さな変化が、最初の一歩でした。
言葉のキャッチボールを「見える化」する

この日のワークの中でも特に印象的だったのが、「言葉のキャッチボール」を視覚化する場面。
実際にボールを使って行われたワークでは、参加者全員が“相手に届ける”という動作を目に見えるかたちで体感しました。
言葉のやりとりをボールに置き換えてみると、 「受け取る」「返す」のどちらも、丁寧な準備が必要であることがわかります。 相手の方にきちんと体を向け、ボールを投げるときの手の高さやスピード、 そして受け取る側の構えの姿勢が、実は日常の会話にもそのまま現れていること。
ほんの少し意識を変えるだけで、伝え方も、受け取り方も大きく変化するということを、 会場全体であらためて実感できた時間でした。
受信の姿勢が、場を変える

最初に取り組んだのは、“受信”に関するワーク。
- 体と心を向けること
- 目を合わせること
- 相手に、反応で返すこと(言葉・表情・しぐさ)
この一見地味とも思える行動が、実は大きな意味を持っていること。 参加者がその姿勢に気をつけ始めると、話し手の表情が変わり、声にハリが出てくる。
情報は言葉だけでなく、表情や姿勢、雰囲気の中に溶け込んでいます。 その微細な変化を受け取るために、まず自分の受信の器を整えること。
日々の忙しさのなかで、無意識に置き去りにしがちな「聴く」という行為を、改めて意識する時間になりました。
実際にやってみると、ただうなずくだけ、ただ目を合わせるだけで、相手との距離がふっと近づく瞬間が訪れます。
話している人の表情がやわらぎ、受け取っている人にも自然と笑みが浮かぶ。
「聴いてくれている」と思えるだけで、こんなにも安心感があること。
言葉を使わなくても、伝わる感覚があること。
それを体ごと確かめる時間でした。
アンケートの自由記述では、「目を合わせてうなずくだけで、相手が安心して話してくれるのを感じた」といったコメントも寄せられ、 シンプルな動作が場の空気に影響を与えることへの気づきが多く見受けられました。
この「話を聴く」ことのあたらしい見方は、その後に繰り返される「伝える」ことにも縁を縫いていくようでした。
発信の力に気づく瞬間

次に行われたのは、“発信”のワーク。
3秒で、名前・自己紹介・今日の参加理由を伝えるというもの。
はじめは照れや遠慮が混じり、声が小さかったり、目線が定まらなかったり。
けれど、不思議なことに、「聴いてくれる人」がちゃんと受け止めてくれていると、
言葉に“伝えたい”気持ちが宿るのです。
更に印象的だったのは、“言葉を使わず、身振りだけで伝える”というワーク。
最初の動きは控えめで、手の位置も低く、小さなものでした。
しかし、回を重ねるごとに、手の動きは大きくなり、位置も高くなっていく。 表現するということは、言葉以上に勇気を伴うこと。
でもそれを受け取ってもらえる実感があるからこそ、少しずつ前に出られるようになるのだと感じさせられました。
繰り返すうちに、声に芯が通り、指先に力が入り、笑顔が加わっていく。
それは、伝えるという行為が、ただの“言葉のやりとり”ではなく、
自分の想いを“相手に届ける”ことへと、自然に変わっていく過程でした。
アンケートの自由記述の中には、「声が自然に出せた」「3秒でも伝えたいことがあると気づいた」といった声があり、 短い体験の中でも、自分の変化を感じていた様子がうかがえました。
「信頼しても大丈夫だ」と思えたとき、人は動ける

「聴く」「伝える」を経て、次に行われたのが「体を預けるワーク」でした。
目を閉じ、合図とともに、後ろにいる相手に自分の体をあずける。
初対面に近い相手に対して、自分の重さをまるごと任せるこのワークには、
受信や発信とはまた違った“信頼”が試されます。
最初のチャレンジでは、どこか緊張感が残っていました。
体に力が入り、慎重に倒れる姿が多かったのです。
けれど、一度やってみた後、先生がこう言葉を添えます。
「信頼って、言葉で伝えなくても“体”に現れるんです」
その言葉のあと、2回目のワークでは空気が変わりました。
体をあずける人の動きがなめらかに、支える側の手が自然に前に出る。
見ていて、どのペアからも「安心していい」という感覚がにじみ出ていました。
人は、信じてもらえていると感じることで、信じ返す準備ができる。
その静かなやりとりが、会場のあちこちで行われていました。
声なき変化が、表情に現れる
会の冒頭で、参加者には「今の気持ち」を付箋に書いてもらっていました。
- 緊張している
- 不安です
- 話すことに自信がない
そんな言葉が並んでいたのに、ワークショップの終盤ではその表情がまるで変わっていました。
声が少し大きくなる。
目がしっかりと相手をとらえる。
うなずきやリアクションに、自然なリズムが生まれる。
最後に記入された付箋には、こういった言葉が見られました。
- 「話すのが、ちょっと楽しいと思えました」
- 「相手の目を見ることが、こわくなくなりました」
- 「言葉って、ちゃんと届くんだなと感じました」
言葉の変化、表情の変化、それぞれが少しずつ寄り添いながら、
90分という短い時間のなかで、静かに確かな成長が積み重なっていたのです。
終わった後も、言葉がつづいていた
ワークショップの終了後。
片付けが始まっても、すぐに帰路につく人はほとんどいませんでした。
隣にいた人と感想を言い合う人、
名前を聞き合っている人、
なんとなくその場の余韻に浸っている人。
誰かが促したわけではない。
けれど、自然と交わされる言葉が、会場をやさしく包んでいました。
イベントの時間は終わっても、
心の中では“話す”と“感じる”が、まだ続いているような、そんな後味の残る空間でした。
言葉を交わそうとしなくても、ふとした目線やしぐさが合図になって、
自然と会話が生まれていたのは、アナログコミュニケーションだからこそ。
誰かの声に耳を傾け、反応が返ってくる。そのやりとりが、ごく当たり前のように流れていたのです。
あたたかい「コミュニケーション」は、ここから広がっていく
今回の「at shibuya live」は、テクニックではなく、
“どう在るか”に立ち返るコミュニケーションワークショップでした。
相手と目を合わせてみること。
声に気持ちをのせてみること。
信頼してみようとすること。
すべてのワークが、「人と人はちゃんとつながれる」ということを、
体と心を使って思い出させてくれるような90分だったように思います。
たった一言が、たった一歩が、
自分と誰かの関係性を、やさしく変えていく。
そんな体験をそっと持ち帰った人たちが、
またどこかで「話す×感じる」を重ねていく。
そんな未来が静かに始まっているように思いました。
本セミナーのアンケート結果
NPSスコア:66.7
全体的な満足度:非常に満足67%・満足33%
「コミュニケーション力」アップにつながりますか:非常につながる78%・繋がる11%・分からない11%
講師の指導力について満足しましたか:非常に満足100%

アンケート・参加後の気持ちより一部抜粋
- 「反応してもらえることがこんなに嬉しいなんて、久しぶりに実感した」
- 「目を見ることの意味を、初めて身体で理解できた気がした」
- 「リアルコミュニケーションの大事さを学べた」
- 「コミュニケーションの楽しさを知れました」
- 「講師の方の熱量に自分も真剣になってイベントに取り組むことができました」
- 「同じテーマでまたワークを受けたい」
- 「こんな短時間で初対面の方と打ち解けられたのは初めての経験でした」
監修:監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
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