残業月50時間以上の懸念点とは|36協定や固定・みなしとは何か詳しく説明
「毎月50時間残業しているけれど、これって長いの?」
「50時間残業すると、どのくらい残業代がもらえるの?」
自分自身の残業時間について、さまざまな疑問をお持ちという方もいるのではないでしょうか。
本記事では、残業を月50時間以上行った場合の懸念点や対策法について説明します。
この記事を読むことで、残業代の算出方法や、みなし残業の定義など、残業に関する知識を得るとともに、長時間残業をすることによる影響を理解することができます。また残業についての正しい知識を得ることで、自分自身の働き方を見直すことができるでしょう。
残業について正しい知識を得たいという方や、月50時間以上残業しているという人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
残業月50時間は長い?
日本において、時間外労働(残業時間)の9割は、月45時間以下が占めています。
業種別の割合を見ても、多少の差はあれど、どの業種も月45時間以下が最も多い割合を占めています。その現状に鑑みると、残業月50時間は比較的長いと考えられるでしょう。
出典:我が国における時間外労働の現状 ⑩1か月の法定時間外労働の実績(事業割合)|厚生労働省(PDF)
1日の残業時間
月に50時間残業をしている場合、単純計算すると1日に約2.5時間は残業していることになります。
定時の勤務終了時刻が18時である場合、退勤できるのは20時半頃になるということになるため、家に帰ってからプライベートな時間をつくるには、時間が足りないと考えられています。
36協定を超えている
月50時間以上の残業は、36協定での上限を超過しています。
36(サブロク)協定とは、時間外労働(残業)をさせるために会社と労働者で締結する協定です。時間外労働の上限は、月45時間・年360時間と定められており、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできないことになっています。
出典:36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針|厚生労働省(PDF)
残業月50時間以上の懸念点
残業月50時間以上という状態には、いくつかの懸念点があると考えられています。
残業しなければ業務が終わらないという状態は、仕事中によくある状況でしょう。しかし、月に50時間以上残業をしているという状況は、さまざまなことが懸念される状況であると言えます。
36協定を締結していない可能性がある
残業月50時間以上が常態化している場合は、会社が36協定を締結していない可能性もあるため確認してみると良いでしょう。
残業月50時間以上は、「時間外労働の限度に関する基準」で定められた一月の残業時間の基準を超過しています。そのような事態が当たり前となっている場合、会社側の残業時間に対する意識が低いため、36協定などの必要のある協定も結んでいない可能性もあるでしょう。
毎月続くなら要注意
たとえ36協定を締結していたとしても、無制限に残業できるわけではないため、残業月50時間以上が毎月続くようであれば注意が必要です。
残業時間には「時間外労働の限度に関する基準」が定められています。例えば1か月45時間、1年360時間などという基準があるため、毎月のように50時間の残業を続けていると、年間の基準時間も超過してしまうことになります。
出典:一日の残業時間は労働基準法ではどれぐらいですか。|厚生労働省
過労死の可能性が高くなる
月50時間以上の残業などの長時間労働により、過労死の可能性が高くなるでしょう。
月の残業時間が50時間以上になると、過労死の可能性が高くなると考えられています。厚生労働省が提示している「過労死等防止のための取組」には、「長時間労働の削減」が掲げられており、長時間の残業が過労死につながるということがわかります。
残業代が出ない場合がある
本来、残業した時間分は残業代が支給されますが、残業をたくさんしても残業代が出ない場合があります。
実際には残業していても、それを会社に報告せず、いわゆるサービス残業をしている状態になってしまっている場合は、残業代が出ません。また、法律上の「管理監督者」にあたる管理職の場合には残業代の支払いが義務付けられていません。
そのほか、後述する「みなし残業」の場合は、取り決めにより、定められた一定の時間数までは残業代が支給されないため注意が必要です。
家庭との両立が難しい
残業を月50時間以上しているような状態では、家庭と仕事との両立をするのは難しいと言えるでしょう。
家で過ごす時間が短いため、家事や子育てにかける時間がどうしても少なくなってしまいます。ワークライフバランスが取れていない状態であると言えるでしょう。
冠婚葬祭などに対応しにくい
冠婚葬祭に対応しにくいほど仕事が忙しいと、私生活に影響が出てしまうでしょう。
仕事が忙しすぎると、日時が決められている冠婚葬祭に対応できないという事態が発生する可能性があります。
自己投資に時間が割けない
残業を月50時間以上しているような状態では、自己投資のために時間を割くのは難しいと言えるでしょう。
自身のスキルアップやキャリアアップのためには自己投資が不可欠ですが、会社での残業に時間を取られてしまうと、そのような時間を捻出するのは難しくなってしまいます。
月50時間の残業代を計算する方法
月50時間残業すると、残業代はいくらになるのか、自分自身で計算してみましょう。
残業代を計算するためには、いくつかの手順を踏む必要があります。以下で説明する手順に沿って、自分自身の残業代を実際に計算してみましょう。
月給から手当などを除外した金額を算出する
まずは、月給から各種手当などを除外した金額を算出します。
個人的事情により支給される手当は、割増賃金の計算の基礎に含めないこととされています。そのため、家族手当や通勤手当、住宅手当などを除外した金額を算出しましょう。
ただし、上記のような名目の手当であっても、個人的事情ではなく従業員一律に支給されているような場合は、割増賃金の計算の基礎に含めるため注意が必要です。
月給から時間給を算出する
次に、時間給を算出しましょう。
具体的には、「月給÷(1日の所定労働時間×1カ月の勤務日数)」を計算して求めます。ただし、この求め方では土日や祝日の有無によって時間給が変化してしまいます。
そのため、より正確に1時間あたりの賃金を計算するためには、「月給÷1カ月の平均所定労働時間」を求めなければなりません。1カ月の平均所定労働時間とは、1カ月間の所定労働時間を1年間の平均から求めた数字です。
すなわち、所定労働時間と1年間の勤務日数をかけて12で割ることによって、1カ月あたりの正確な所定労働時間を算出した後、その数値で月給を割ることによって、正確な時間給が算出できます。
なお、求めた時間給について1円未満の端数が生じた場合、50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることは認められています。
残業時間に算出した時間給をかける
次に、その月の残業時間に算出した時間給をかけます。
なお、1ヶ月の残業時間数について1時間未満の端数がある場合には、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは認められています。
割増率をかける
最後に、割増率をかけることで、残業代が算出されます。
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分の残業については、求めた残業代に1.25を割増率としてかける必要があります。
そのほか、会社の規模に応じて、一定の基準時間を超えた際にはさらに高い割増率をかける必要などが生じるため、正しい割増率を確認しておきましょう。
知っておきたいみなし残業(固定残業)の知識
「みなし残業」とは「固定残業」ともよばれ、固定給の中に、一定時間分の時間外労働や休日労働及び深夜労働に対する割増賃金が定額で含まれている勤務体系のことです。
一定時間分の残業代が給与に含まれているからといって、その分残業をしなくてはいけないということではありません。また、定められている一定時間分の時間を超過した分については、割増賃金が払われる必要があることは知っておきましょう。
残業50時間以上の場合の対策法
残業月50時間以上だという人は、何かしらの対策をとるのがおすすめです。
前述のとおり、残業月50時間以上という状態にはさまざまな懸念点があります。残業時間を減らすため、考えられる対策を説明します。
業務の効率化を図る
まずは、業務の効率化を図ることが大切です。
自分の仕事のやり方に無駄はないか、やらなくてもいい作業に時間を割いていないか、自動化や外注できる作業はないか、などといった視点で業務を見つめ直してみましょう。効率化を図って、同じ仕事量をより短時間で行えるようになる可能性もあります。
優先度の高い業務から進める
業務を行う際には、優先度の高い業務から進めることを徹底するようにしましょう。
そこまで優先度の高くない業務から手をつけ、締切の迫った優先度の高い業務を後回しにしていると、焦って業務に取り組む必要が生じ、残業時間が増える原因になります。
他の会社へ転職する
業務のやり方を工夫しても残業時間が短縮されない場合は、他の会社へ転職するのも解決策の1つです。
そもそもの仕事量、職場の雰囲気や社風などが残業時間に影響している場合は、自分自身の努力で状況を改善することは難しい可能性もあります。その場合には、思い切って他の会社へ転職してみるのも良いでしょう。
労働基準監督署へ通報する
自分自身の努力で改善が難しい場合や、会社から長時間労働を強要される場合には、労働基準監督署へ通報することも検討すると良いでしょう。
労働基準監督署では、労働基準法などの違反が疑われる事業場の情報をメールで受け付けています。寄せられた情報は、労働基準監督署・都道府県労働局において、立入調査対象の選定に活用されます。
労働基準監督署の個別対応を希望する場合は、最寄りの労働基準監督署や「労働条件相談ほっとライン」に相談しましょう。
未払い残業代について弁護士に相談する
未払いの残業代があるという人は、弁護士に相談してみるのも良いでしょう。
残業代の未払いは違法です。ただし、労働基準監督署は監督機関であるため、会社から残業代を取り立ててくれることはありません。
未払い残業代請求のサポートを頼みたい場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。
残業月50時間を超えたら無理せず対策を取ろう
残業月50時間は、心身ともに影響のある状態であると言えるため、何かしらの対策をとることがおすすめです。
現状を当たり前と思わずに、残業時間を減らすことができるか試したり、転職を検討したり、労働基準監督署や弁護士へ相談したり、考えられる方法は色々あります。無理して耐え続けることなく、現状の打開のために行動してみましょう。
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
株式会社エーティーエスが運営する本サイト「キャリテ」では、みなさまの「キャリア」「働く」を応援する記事を掲載しています。みなさまのキャリアアップ、より良い「働く」のために、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
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