「個人事業主の売上って具体的に何のこと?」
「売上の計上はいつするの?」
「売上を計上するときに気を付けるポイントは?」
個人事業主の中には、自分自身で経理業務や確定申告を行っている人も多いでしょう。それらの処理には多くの知識を要します。
この記事では、個人事業主の売上計上のタイミングや注意すべきポイント、消費税の計算方法などを詳しく解説します。この記事を読むことで、個人事業主が持つべき正しい会計処理のための知識が身につくでしょう。
売上の計上などの処理が誤っているとペナルティの対象になる可能性があるため、これからフリーランスとして独立しようと考えている人は、この記事を読んで会計処理や税金などへの理解を深めましょう。
目次
個人事業主の売上とは
個人事業主の「売上」とは、商品を販売したりサービスを提供したりする事業活動によって得る収入のことです。一方、「売上高」とは「売上の総額」のことです。
個人事業主の場合、1月1日から12月31日までの「収入」や「支出」などをまとめ、1年分の決算を行います。収入の計上では、「売上」以外の勘定科目が適当な場合もあるなど、単純に収入が売上にならない場合もあるため注意が必要です。
ここからは個人事業主の「売上」について解説します。
売上=入金ではない
入金と売上はイコールではありません。入金は直接現金を受領したり、取引先から口座にお金が振り込まれたりすることです。一方、売上は本来の事業活動によって受け取る収入を計上するときに使う勘定科目です。
売上は代金を受け取る権利が発生、あるいは確定した時に計上できるもので入金とは異なります。
売上計上のタイミング
基本的に売上計上のタイミングは、自分がお金を受け取る権利が生じたときあるいは確定したときです。
その基準は原則として「引き渡し時点」となるものの、出荷・納品・検収・使用収益などの基準もあるため、合理的基準であればその他の基準も認められます。
つまり、実際には個人事業主が適当だと考えられる売上計上の基準を、取引先ごとに選択するのが一般的です。
個人事業主の売上が1,000万円を超えた場合に起こることとは?
個人事業主の仕事が軌道に乗り年間売上が1,000万円を超え始めると、これまでとは異なる対応が求められます。ここからは、年間売上が1,000万円を超えた場合に生じる変化を見ていきましょう。
2年後から消費税の納付義務が発生する
売上高が1,000万円を超えると、2年後から消費税を納付する必要があります。消費税の標準税率は10%、飲食料品などの軽減税率は8%です。
売上高が1,000万円を超えてすぐに消費税の納付義務が発生するわけではありませんが、注意が必要です。なお、個人事業主として開業した年は消費税の課税対象業者になることはありません。
出典:消費税のしくみ|国税庁
所得税が増える
売上高が増えていくにつれ、所得税も増えていく可能性があります。日本の所得税は累進課税制度を採用しているため、所得が多いほど税率も高くなります。
「事業所得」は「総収入金額から必要経費を引いた金額」です。そのため、売上高のみでは判断できませんが、収入が増えれば所得も増える場合が多いため、所得税も上がる可能性が高いでしょう。
なお、所得税率は5%から45%の7段階に分かれており、たとえば所得が500万円の場合は20%(控除額:427,500円)、700万円の場合は23%(控除額:636,000円)、1,000万円の場合は33%(控除額:1,536,000円)となっています。
税務調査の対象となる可能性がでてくる
「税務調査」は適切に納税しているかを確認するために、税務職員が納税義務者に対して質問し、帳簿書類などを検査することです。
すべての納税義務者が税務調査の対象となり得ますが、事業規模の拡大が続いていると目立ったり、経理業務が煩雑になったりすることから、調査対象となりやすいと言われています。
逆に売上高が1,000万円にわずかに満たない年が続くと、消費税支払いを免れるための売上操作の可能性を疑われて、調査対象となる場合もあります。
いずれにしても、税務調査の対応には時間的・精神的な負担が大きいため注意が必要です。
経理業務が増える
個人事業主の売上が1,000万円を超えるということは、事業規模が拡大していることになるため経理業務も煩雑になるでしょう。
取引が増えれば、請求や支払いなど売掛・買掛管理の手間が増えます。また、従業員の増加に伴って、給与計算や年末調整などの負担も増えていきます。
消費税の基本の計算方法
次に、個人事業主が支払う消費税の算出方法について見ていきましょう。
消費税の計算は原則課税が基本ですが、簡易課税が選択できる場合もあります。ここでは両者の違いを詳しく解説します。
原則課税の場合
納税する際は消費税と地方消費税をまとめて納税します。原則課税の場合、消費税額は「課税売上に係る消費税額(売上税額) ― 課税仕入等に係る消費税額(仕入税額)」です。
具体的には、1月1日から12月31日までの1年間の課税売上高に7.8%をかけた額から、課税仕入高に110分の7.8をかけた額を差し引いて計算します。
ただし、軽減税率の適用対象となる場合は、6.24%をかけた額から、108分の6.24をかけた額を差し引きます。一方、地方消費税の納付税額は、消費税額に78分の22をかけた額です。
簡易課税の場合
一定の条件(個人事業者は前々年における課税売上高が5,000万円以下など)を満たし、必要な手続きを踏めば、簡易課税制度の特例が適用されます。
簡易課税の場合の消費税額は「課税売上に係る消費税額 – 課税売上に係る消費税額 × みなし仕入率」で求めます。
みなし仕入率は、事業区分によって40~90%の間で6段階に分かれています。
売上が1,000万円を超えたら法人化も選択肢の1つ
売上が順調に伸びている場合は、法人化を検討するのも一つの選択肢です。法人とは、法務局で法人設立登記をして事業を営む形態のことです。
法人化するメリットとデメリットを考慮して、法人化するのかもしくは個人事業主のままでいるのかを選択しましょう。
メリット
事業を法人化するメリットの一つは、納税額が抑えられることです。累進課税制度を採用している所得税を支払う個人事業主より、最大でも税率が23.2%である法人税を支払う法人の方が、利益を出せる場合もあるでしょう。
また、家族に給与を支払うことで給与所得控除を受けられる、出張手当や慶弔金などを経費にできる、法人は社会的な信頼が高く補助金や助成金が申請しやすい、などのメリットもあります。
デメリット
メリットが多い法人化ですが、デメリットもあります。まず社会保険の適用事業所になるため、従業員の社会保険・労働保険の保険料を払う義務やそれに伴う事務作業の負担が生じます。
また、法人の場合はたとえ赤字であっても、住民税(都道府県民税や市区町村民税における均等割部分)を納税する必要があるでしょう。さらに、法人化するには登記に伴う費用など設立費用が発生することも忘れてはいけません。
個人事業主の売上計上のタイミングや税金について正しく理解しておこう
個人事業主にとって売上は必須の項目であるため、売上計上のタイミングや税金について正しく理解しておくことが重要です。
また、個人事業主の売上高が1,000万円を超えたときに生じる変化や考慮すべきポイントも頭の隅に入れておきましょう。
個人事業主は本業に集中できるよう、適切な会計処理を行って、しっかりと税金対策に取り組みましょう。
※初回公開日:2024年2月14日
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
株式会社エーティーエスが運営する本サイト「キャリテ」では、みなさまの「キャリア」「働く」を応援する記事を掲載しています。みなさまのキャリアアップ、より良い「働く」のために、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
-
IT・Web業界で活躍できるお仕事情報多数掲載
-
あなたの成長を叶える魅力的なお仕事情報多数掲載