なぜ確定申告で追徴課税が必要となる場合があるのか|原因とその対処法を解説
「きちんと確定申告したはずなのに、追徴課税が必要と言われたのはなぜ?」
「確定申告で不備を指摘されて、追徴課税が必要になったけどどうしたらいい?」
過少申告など、確定申告で不備を指摘された場合、追徴課税が必要となることがありますが、追徴課税について、よく知らないという方もいるのではないでしょうか。
この記事では、追徴課税が発生してしまう理由や所得税額の計算方法、ペナルティとして課される加算税の種類などを紹介しています。
この記事を読むことで、なぜ追徴課税が発生してしまうのかを把握できるため、確定申告の際に不備が起こらないように注意できるでしょう。
追徴課税について知りたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
確定申告で追徴課税が必要となるのはなぜ?
追徴課税とは、本来納めるべき税額が何らかの原因で足りなかった場合や申告・納付期限を守らなかった場合に、ペナルティとして課される加算税などのことです。
普段、確定申告を行って所得税などを納めている個人事業主だけでなく、贈与税や相続税、副業などで確定申告が必要になった給与所得者も、追徴課税が発生しないように注意しなくてはなりません。
ではなぜ、追徴課税が必要になるのでしょうか。はじめに、追徴課税が必要となる原因と所得税の計算方法を紹介します。
追徴課税が必要となる原因
追徴課税が必要となるのは、「申告期限までに確定申告しなかった」「本来納付すべき金額よりも納税額が少なかった」「納付期限までに税金を納めなかった」という原因が考えられるでしょう。
所得税の申告期限は、翌年2月16日から3月15日まで、納付期限は3月15日まで、法人税の申告期限と納付期限は、事業年度終了後2ヶ月以内です。この期限までに申告・納付を済ませないと、ペナルティとして追徴課税が発生してしまいます。
また、確定申告時に金額の誤りや計算の間違いがあり、本来納めるべき税額よりも少なく申告してしまうと過少申告と判断され、この場合も追徴課税が発生してしまうでしょう。
出典:申告と納税|国税庁
所得税の計算方法
所得税は、「課税所得×所得税の税率」で計算します。
課税所得とは、1年間の所得から所得控除を差し引いたものです。所得控除は、税負担を公平にするために設けられているもので、基礎控除や扶養控除、配偶者控除、医療費控除など15種類あります。
所得税率は、課税される所得金額に応じて5%から45%の7段階に分かれています(分離課税に対するものを除く)。
出典:所得税のしくみ|国税庁
加算税の種類
申告期限に間に合わない、本来納めるべき税額よりも過少に申告したなどの理由で適切な申告が行われなかった場合、ペナルティとして加算税が課されます。
ここからは、加算税の種類について詳しく紹介しますので、参考にしてください。
無申告加算税
無申告加算税とは、定められた期日までに申告が行われなかった場合に課される加算税です。納めるべき税額の50万円までは15%、50万円を超える部分には20%を乗じた金額が課されます。
しかし、次に挙げる要件を全て満たす場合には、期日後の申告であっても無申告加算税は課されません。
・法定申告期限の1ヶ月以内に自主的に申告した
・法定納付期限までに全額納付された場合
・過去5年間(期限後申告書を提出した日の前日から起算)に、無申告加算税や重加算税を課されたことがない
・過去5年間に、申告する意思があると認められた場合の無申告加算税の免除を受けていない
なお、法定納期限後(期限後申告の場合、申告書提出日が納期限)の納付には、無申告加算税に加え延滞税が発生しますので、注意してください。
重加算税
重加算税とは、納税額を低くするために帳簿書類の破棄や隠ぺい、改ざん、二重帳簿の作成、納税を免れるために意図的に申告を行わないなど、申告で仮装や隠ぺいが行われた場合に課される加算税です。
仮装・隠ぺいが発覚した場合、過少申告加算税・不納付加算税に代えて35%、無申告加算税に代えて40%の重加算税が課されることになっています。
なお、過去5年間に、無申告加算税または重加算税を課された経験がある場合や、国税関連書類や取引の電磁的記録の仮装・隠ぺいが発覚した場合には、上記の税率に10%加算された税額が課されるため注意しましょう。
過少申告加算税
過少申告加算税とは、期限内に申告したものの、申告額が本来納めるべき税額よりも少なかった場合に課される加算税です。
過少申告加算税は、新たに納めることになった税額の10%となっています。ただし、追徴税額のうち、期限内申告税額と50万円とを比較して多い方の金額を超える部分に関しては、税率が15%となるため注意しましょう。
なお、税務署からの不備を指摘される前に、自主的に修正申告した場合には、過少申告加算税は課税されません。過少に申告していたことが判明したら、速やかに修正申告するようにしましょう。
不納付加算税
不納付加算税とは、源泉徴収した所得税などを期限までに納付しなかった場合に、課される加算税です。
源泉徴収した所得税は、給与支払日翌月の10日までに納めなくてはなりません(従業員が10人未満の場合は、半年分まとめて納めることができる特例あり)。この納期限を過ぎてしまうと、10%の不納付加算税が発生してしまうため注意しましょう。
なお、納期限内に間に合わなかった正当な理由がある場合や、法定申告期限から1ヶ月以内に納付した場合、不納付加算税は課税されません。また、税務署から指摘される前に自主的に納付した場合には、不納付加算税が5%に軽減されます。
出典:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁
追徴課税が必要となったとき
完璧に確定申告をしたつもりでも、見落としやちょっとしたミスで追徴課税が必要になることもあります。追徴課税が必要になった場合には、どのようなことに気をつけたら良いのでしょう。
ここでは、追徴課税が必要となったときに気をつけておきたいことをいくつか紹介します。
追徴課税は即座に納付
追徴課税が必要と分かった場合には、即座に納付するようにしましょう。
税務署からの通知を無視していると滞納処分となり、財産差し押さえのための財産調査などが行われます。それでも納税に応じなければ、財産調査を基に決められた財産が差し押さえられてしまうため注意しましょう。
もし、払う意思はあるが、即座に払えない状況にある場合には、速やかに税務署に相談することをおすすめします。
なお、追徴課税に納得がいかない場合には、「再調査の請求」もしくは「審査請求」することが可能です。
出典:[手続名]税務署長又は国税局長が行った更正や決定、滞納処分などに不服があるときの再調査の請求手続|国税庁
原則一括納付
追徴課税は、本来期日までに支払うべきであった税金であるため、原則、一括納付するルールになっています。
しかし、さまざまな事情で一括納付が難しいという方もいるでしょう。一括での納付が難しい場合には、特例で分割納付や支払いの猶予が認められるケースもあるため、速やかに税務署に相談してください。
出典:追徴課税とは|加算税の内容は?追徴される税金の計算方法は?|freee税理士検索
経理上の処理
追徴課税で発生した過少申告加算税などの加算税は、ペナルティとして徴収されるものであるため、損金や必要経費として会計処理することはできません。
法人の場合には、「租税公課」や「過少申告加算税」などの項目で仕訳し、損金不算入の処理を行ってください。なお、租税公課として処理した場合にはどのような内容のお金であるか分かるように、摘要に「不納府加算税」などと記載するようにしましょう。
個人事業主の場合には、「事業主貸」として処理してください。
出典:追徴課税とは|加算税の内容は?追徴される税金の計算方法は?|freee税理士検索
取引銀行にはすぐに連絡を
追徴課税が必要となった場合は、速やかに取引銀行に連絡してください。
過少申告などで加算税が発生すると、一時的に資金繰りが悪化してしまうことが考えられます。資金繰りが悪化し、借り入れの返済が滞ってしまうと銀行にも迷惑がかかってしまうでしょう。
そのため、事前に追徴課税が発生し、資金繰りが悪化してしまうことを伝えておくことで、返済が滞っても相手に理解してもらえる可能性が高いです。もし、一切連絡なしに返済が滞ってしまえば、銀行から不信感を持たれ、その後の取引に影響を与えてしまいます。
できれば税務調査が入った段階で、銀行には連絡しておいた方が良いでしょう。
税務調査時にすべきこと
税務調査は、電話(場合によっては書面)で通知してから行われるのが一般的です。(公平性を保つために、事前通知なしに税務調査が行われる場合もある)。いつ税務調査が来るか分からず、戦々恐々とするということはないため安心してください。
税務調査が行われた場合、疑いを持たれている事項について正当な理由を説明することができれば、追徴課税は発生しない可能性がありますし、税務調査が入るまでに自主的に修正申告を行えば、支払う加算税が軽減される可能性もあります。
税務調査が決まったら、自分1人で対応せず、税理士に相談して準備するようにしましょう。
追徴課税がかからないようにするためには
追徴課税が必要となると、税務調査への対応に時間を取られてしまうだけでなく、資金繰りで苦しい思いをしてしまうことが考えられます。そのため、できれば追徴課税が必要となる事態を避けたいと考える方も多いでしょう。
ここからは、追徴課税がかからないようにするためにすべきことを紹介します。
確定申告の期限を把握する
前述したように、所得税の申告期限は2月16日から3月15日まで、法人税の申告期限は事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内となっています。
期限を厳守することで、無申告加算税がかからないようにすることができるため、期限を把握して確定申告するようにしましょう。
出典:申告と納税|国税庁
自動引き落としを利用する
期限内にきちんと確定申告をしても、税金の納付が遅れると、法定納期限の翌日から納付日までの延滞税が発生してしまいます。
法定納期限までにしっかり納付するためには、自動引き落としを利用すると良いでしょう。
税金の納付方法には、自動引き落とし以外に金融機関やコンビニでの現金納付、クレジットカードを利用した方法などがあります。しかし、これらの方法を選択していると、支払う意思があっても忙しさなどの理由から忘れてしまう可能性があるでしょう。
自動引き落としにしていれば、振替日にきちんと支払われるので忘れる心配はなくなります。ただし、残高不足で引き落としが行われなかった場合、納期限に間に合わなかったとして延滞税が発生してしまいます。口座残高は確認しておきましょう。
出典:【税金の納付】|国税庁
もし確定申告で税金を支払えないときは?
もし期限までに税金を支払えないということが分かった場合には、「換価の猶予」もしくは「納税の猶予」の申請をしましょう。
換価の猶予とは、税金を納めることで、事業の継続や生活の維持が難しくなる可能性がある場合に認められる制度です。
換価の猶予が認められると、既に差し押さえられている財産の換価の猶予、猶予期間中の延滞税の軽減、事業継続や生活維持に必要な財産の差し押さえの猶予が行われます。
一方、納税の猶予とは、事業の休業・廃業や災害、病気などで税金を納めることができないと認められる場合に、納税を最大1年間猶予してもらえる制度のことです。
猶予が認められた場合、その期間は滞納処分の執行を受けなくなりますし、既に差し押さえられた財産の解除、猶予期間中の延滞税の軽減が行われます。
確定申告の注意点
近年、副業を行ってもよいとする会社が増えています。そのため、本業とは別に副業をしているという給与所得者の方もいるでしょう。
副業をする際に注意したいのは、給与以外に20万円以上の所得を得ていると、確定申告をしなくてはならない点です。給与以外の所得が20万円を超える方が、確定申告を忘れると追徴課税が発生してしまう可能性があるため、注意してください。
出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
確定申告をしっかりして追徴課税がかからないようにしよう
ここまで、確定申告で追徴課税が必要となる場合について紹介してきました。
期限内に確定申告を行わなかった場合や、本来納めるべき税額よりも少ない金額を申告していた場合などには、無申告加算税や過少申告加算税などの加算税が課されてしまう可能性があります。
追徴課税が必要とならないように、しっかり確定申告を行いましょう。もしミスなどで追徴課税が必要と言われた場合には、すぐに対応してください。
※初回公開日:2023年2月7日
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
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