「自宅開業するにはどんな手順がある?」
「自宅開業のメリットやデメリットが知りたい」
「どんな職種が自宅開業に向いている?」
自宅開業について関心があっても、具体的に何から始めればいいか疑問に思うことはよくあるのではないでしょうか。
この記事では、自宅開業する際の手順や、メリット・デメリット、手続き上の注意点などを解説していきます。
本記事を読むことで、自宅開業の具体的なメリット・デメリットを把握できるでしょう。また、自宅開業に向いている職種も紹介しているため、職種が決まっていない場合でも参考にしていただけます。
これから始めたい人や、自宅開業のメリット・デメリット、手順や概要を知りたい人などは、本記事を参考に検討してみてください。
目次
自宅開業に向いている業種は?
自宅開業に向いている業種は、専門的なスキルや知識が必要なものから趣味や特技を活かせるものまでさまざまです。
職種によって開業時に必要な手続きや初期費用、資格の要不要などは違ってくるため、事前に確認すると良いでしょう。
1:習い事の教室
ピアノや書道、生花などの習い事の教室は、人に教えられるスキルがあれば自宅開業に向いています。趣味でできるようなものや、自宅の小さなスペースでも教えられるものであれば、比較的簡単に開業できるでしょう。
ただし、陶芸や木工、ステンドグラスといった工芸は、自宅で作業するのは難しいため、教室用の建物を別に用意するなどの準備が必要になります。
一般的でないような習い事であっても、特技を活かして新しい需要を開ける可能性もあるでしょう。
2:ネイルサロン等美容・リラクゼーションサロン
ネイルサロンなどの美容系サロンやリラクゼーションサロンは、施術する場所を確保できれば自宅での開業に向いています。
ネイリストは美容師や理容師とは違い、資格を取得する必要がないため、趣味から始め数年かけて自宅開業する人もいます。
リラクゼーションサロンも、慰安やくつろぎ、安らぎを与える目的の施術とみなされるため資格は必要ありません。
競合と差別化したい場合や実績を証明したいという場合は、アロマセラピストやボディセラピストといった民間資格を取得するといいでしょう。
出典:理容師美容師になるためには|公益財団法人理容師美容師試験研修センター
3:税理士等の士業
士業とは、国家資格を取得して専門的な分野で独占業務を行える職業のことを言います。特に弁護士や税理士などは難関資格であることから、資格に合格すれば開業後も有利になります。
また、基本的に専門知識を提供することが仕事であり、場所に縛られる必要がないため、自宅開業に向いているでしょう。
士業には、弁護士や税理士などのほかに、司法書士や行政書士、社会保険労務士などさまざまな職業があります。
出典:税理士制度|国税庁
4:カフェ等の自宅ショップ
カフェを始めとしたショップなども自宅開業に向いています。最近では週末だけ自宅で営業するスタイルもあり、柔軟な働き方も可能でしょう。
飲食店を開業する場合は、食品衛生責任者資格、飲食店営業許可申請が必要となります。加えて、自宅が飲食店を開業できる地域であるかどうか確認することが重要です。
都市計画では、住宅地や商業地、工業地などの区分があり、それぞれが効率的な活動を行えるようにルールが設けられています。基本的に同じような種類の土地利用で使用するように制限されているのが用途地域です。
例えば、第一種低層住宅専用地域は低層住宅のための地域で、小規模なお店や事務所などをかねた住宅、小中学校などが建てられる地域とされます。
用途地域の区分によっては開業できないこともあるため、しっかりと事前に確認するようにしてください。
5:ネットショップ運営等のインターネットビジネス
ネットショップの運営やインターネットを利用したビジネスは店舗を有する必要がなく、パソコンとインターネット環境があれば開業できるため自宅開業に向いています。
必要なものとしては、在庫などを保管するスペースや商品の制作費、ラッピング用品などの初期費用です。
最近は衣類やアクセサリーを自作して販売したり、輸入雑貨のオンラインショップを運営したりなどの、インターネットを活用した出店が人気となっています。
無料で使えるオンラインショップ開設サービスも多様になり、初心者でも手軽にオンラインショップをオープンできるようになりました。
6:コンサルティング業
コンサルティングとは、相談者に対し専門知識や経験を元にアドバイスし、課題を解決する仕事です。顧客が指定する場所に出張するなどして仕事をするケースが多いため、自宅を事務所として開業することが可能です。
特定の分野で豊富な経験や専門的な知識、実績が必要となりますが、開業のために特別な費用はかかりません。
経営やIT、WEBマーケティングなどの分野で実績がある人には向いていると言えるでしょう。
7:ハウスクリーニング・家事代行業
ハウスクリーニングや家事代行業は、特別な資格やスキルがなくても自宅開業しやすいでしょう。
ハウスクリーニングは家事で落とせない汚れなどをきれいにする住宅清掃のプロです。自宅開業する場合は、専用の機材や運搬用の車両などが必要になるため初期費用がかかります。
しかし、近年は共働きや単身世帯の増加などを背景に需要が高まっていることもあり、自宅開業に向いていると言えるでしょう。
家事代行業は日常的な家事を代わりに行う仕事です。ハウスクリーニングとの違いは、家事の範囲で清掃するため、専門の掃除用具などが不要である点です。初期費用がかからず、家事のスキルがあれば誰でも開業できるのが魅力でしょう。
基本的な自宅開業の手順
業種によって必要な手続きなどは変わってきますが、共通する基本的な開業の手順を6ステップに分けて解説します。手順を把握し、自宅開業の全体的な流れをイメージしておくことで、進めやすくなるでしょう。
1:事業計画書の作成・資金調達
自宅開業を決めたら、まず事業計画書を作成し資金調達に取り組みます。
事業計画ではコンセプトやターゲット、収支計画などを明確にしていきましょう。具体的な事業計画書を作成することで、事業の目的や動機などが明瞭になります。
加えて、資金調達が必要な場合はどのように調達するかも考えておきます。金融機関などから融資を受ける際には事業計画書が必須です。
2:保健所等から許認可を取得
特定の事業を開業するには、警察署や保健所、都道府県などの行政機関から許認可を取得する必要があります。
例えば、飲食店は保健所から、リサイクルショップは古物商許可申請を提出して警察からの許認可を受けなければなりません。飲食店に関しては、営業の形態や扱う食品によって許可業種が複数あるため、よく確かめましょう。
3:備品の準備・スペースの確保
つづいて、開業に必要な備品やスペースを確保します。準備すべき備品は業種によって異なりますが、パソコンやプリンター、専用の電話、通信環境、レジやテーブル、商品の在庫などが一般的でしょう。
提供するメニューや価格もこの段階で考えておきます。顧客を自宅に呼ぶ場合は、専用のスペースを設けるための作業を行いましょう。場合によっては改装や増築などが必要になることもあります。
4:広告の配布等集客の開始
顧客を受け入れる体制が整ったら、広告の配布などの集客を始めます。広告の配布方法には、新聞折り込みやポスティングなどがあるため、有効な方法を選ぶと良いでしょう。
また、WEBサイトの作成、SNSの活用、ブログなどのインターネットを活用した集客も行うと効果的です。
5:税務署に開業届を提出
開業後は1カ月以内(提出期限が土・日曜日・祝日にあたる場合は翌日)に、税務署へ開業届を提出します。特に確定申告で青色申告をしたい場合は、青色申告承認申請書を一緒に提出するのを忘れないようにしましょう。
青色申告承認申請書の提出期限は、承認を受けたい年の3月15日(1月16日以降に開業した場合は開業日から2カ月以内)です。
出典:No.2090 新たに事業を始めたときの届出など|国税庁
6:事業用の銀行口座を開設
プライベートと事業の資金が混同しないように専用の口座を別に作ります。開業届の控えを提出すると屋号が入った口座を開設できる銀行もあるため、活用してみると良いでしょう。
自宅開業のメリットは?
自宅開業する職種や開業する人の生活習慣などによって、何をメリットと感じるかはさまざまです。ここでは一般的な自宅開業のメリットをご紹介します。働く上で重要視する要素や、現在の状況などと照らし合わせて考えると役立つでしょう。
コストが抑えられる
コストが抑えられる点は自宅開業における重要なメリットの一つです。店舗や事務所などの物件を借りる必要がないため、大幅に初期費用が抑えられます。
賃料や水道・光熱費、インターネット料金などの継続して払い続ける定期的な出費(ランニングコスト)も、自宅と共用となるため大きく節約できるでしょう。
自分の裁量で仕事ができる
自宅開業では基本的に仕事の裁量やスケジュールを自分自身で決定します。会社では始業時間や終業時間、休憩時間などが決まっていますが、自宅開業では早朝や夜遅くなどの、自分自身が選んだ時間に働くことが可能です。
ただし、顧客や取引先との関係があれば合わせる必要があります。健康を保つためにも、生活リズムを維持したほうが良い場合が多いでしょう。
家事・育児・介護などとの両立が可能になる
家事や育児、介護などを担っている人にとっては、自宅開業によって仕事と両立できる可能性があります。
子供の世話や介護などの理由により、自宅で常に目を配っていなければならない状況では、外に働きに行くことが難しいこともあるでしょう。自宅で仕事ができれば、子供や被介護者に何かあった時にもすぐ対応できる安心感があります。
通勤時間がかからない
満員電車や長距離通勤をストレスに感じる人にとって、通勤する必要がない点は、自宅開業の大きなメリットとなるでしょう。
毎日の通勤時間が積み重なれば、膨大な時間のロスと考えることもできます。自宅開業であれば、通勤に使っていた時間を仕事に充てるなどして、より有意義に活用できるでしょう。
自宅開業のデメリットは?
ここでは自宅開業のよくあるデメリットを解説します。デメリットには自宅のある場所や業種などの影響もあるため、計画を進める前に問題点を洗い出し対策をとっておくと良いでしょう。
賃貸だと開業できない場合も
自宅が賃貸住宅であれば、開業するにあたり家主の許可が必要になります。このとき、賃貸借契約の中で事務所利用が不可となっている場合は、基本的に開業できません。
賃貸借契約は入居時に交わすものですが、禁止事項などに違反すると契約違反となりトラブルにつながることもあり得ます。自宅が賃貸の場合は、賃貸借契約を確認して開業できるかどうかを調べてください。
住居専用のマンションなどでは、不特定多数の顧客が入室する商売は禁止されていることも多いため気をつけましょう。
集客が難しい
自宅が住宅地の真ん中や交通が不便な場所にあると、集客が難しくなる可能性があります。
店舗での経営は立地が収益に直結するものと言われています。自宅開業では立地を選べないため、集客に不利な場所で自宅開業する場合は、集客方法を工夫する必要があるでしょう。
プライバシー対策が必要になる
職種などにもよりますが、自宅に顧客を招く場合は自宅のプライバシーを守る対策をとっておく必要があります。基本的に自宅開業では住所が公になり、家族構成や生活状況などの私的な情報が危険にさらされるリスクがあるでしょう。
近年はバーチャルオフィスという、登記可能な住所が得られるサービスがあります。顧客の出入りが多い場合などは、あらかじめ対策をとると良いでしょう。
インフラやセキュリティが弱い
企業のオフィスなどはシステム管理がされていますが、自宅の場合は管理の質がどうしても落ちるため、セキュリティやインフラの弱さがデメリットとして挙げられます。
自宅開業では顧客の個人情報を扱うことになりますが、情報が漏洩する可能性があるでしょう。トラブルに発展する可能性があるため、パソコンのセキュリティを強化したり、書類の管理を徹底したりといった、対策を事前にとっておく事をおすすめします。
自宅の改装が必要になる場合も
自宅の一室をそのまま使えないケースでは、改装や設備工事が必要になり、その分のコストがかかる可能性があります。
生活スペースと店舗スペースを分けるための改装や店舗用の建物の増設など、開業する自宅の状況や広さなどによって必要な工事は変わりますが、職種によっては経営に影響するため重要な課題です。
また、飲食店などの場合は、調理時のにおいや人の出入りなどが隣近所の迷惑にならないかどうかを確認しておいた方が良いでしょう。
自宅開業で確定申告をする際の注意すべきポイント
会社員は勤務先などが年末調整によって計算するのに対し、自宅開業では基本的に自分で確定申告を行い所得税を計算する必要があります。確定申告において、自宅開業ならではの注意すべきポイントがいくつかあるため簡単に解説します。
出典:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁
個人事業主は毎年確定申告が必要になる
自宅開業するということは個人事業主になるということであるため、基本的には毎年確定申告する必要があります。
個人事業主にとって赤字でも確定申告するメリットがある青色申告がありますが、青色申告を行う場合は開業届と同時に青色申告承認申請書の提出が必要です。
また、所得が48万以下の個人事業主は基礎控除によって確定申告が不要となります。基礎控除は公平な課税のためにあり、所得が48万以下の人は課税所得が0円になる制度です。
この場合、義務はないものの、確定申告しないと所得証明が得られないため、賃貸契約ができなかったり、ローンを組めなかったり、医療控除が受けられなかったりなどの不都合が出る可能性があります。気になる人は確定申告しておきましょう。
光熱費や家賃も経費にすることができる
自宅開業では、家賃や光熱費なども経費として申請できます。
このとき、プライベートと仕事に使っている分の割合を決めて計算するため、全額を経費に含めることはできませんが、仕事で使う分は経費にできます。
同じ住所で複数の開業も可能
同じ住所で複数の開業もできるため、ほかの家族がすでに自宅開業しているケースでも自宅開業はできます。ただし、同じ住所の光熱費などを複数人分重複して経費に含めることはできないため注意しましょう。
自宅開業のメリット・デメリットを把握した上で挑戦してみよう
この記事では自宅開業する際のメリット・デメリットや注意点などを解説しました。自宅の立地や業種によってメリット・デメリットは変わってきますが、計画の段階で対策を立てておくことで問題が起こった場合も対処できるでしょう。
ご紹介した向いている業種以外にも、特技やスキルを活用して自宅開業できる可能性があります。メリット・デメリットを把握し、構想を練った上で挑戦してみましょう。
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
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