多種多様な働き方が求められている昨今において、個人事業主という働き方が注目を集めています。一方で個人事業主になってみたいという方の中には「大変そう」「自分には難しそう」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
確かに、個人事業主のやることが多岐に渡るのは事実です。しかし、やることリストを活用すれば、数多くの煩瑣な業務も効率的に進めることができます。
この記事では、やることリストに必要なことを一挙に紹介します。この記事を読めば、個人事業主が初めての方でも何をするべきか詳細に理解でき、やり残しなどを減らせるでしょう。
個人事業主になりたい方、また個人事業主として早期に事業を軌道に乗せたい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
個人事業主になる際のやることリストを把握しておく必要性
個人事業主がやることは多岐に渡ります。これまで会社員一筋で働いてきた方が個人事業主になる場合であれば、必要書類の作成や役所における手続き、口座の作成や資金準備など、やることを把握しきることは難しいでしょう。
開業における工程に漏れがあると、事業を開始してから大きな問題に発展しかねません。漏れをなくすためにも、必要な準備をリスト化しておくことは非常に重要です。
紙媒体でリストを作成しても良いですが、パソコンで作成するなどしてスマートフォンで常にチェックできるようにしておくのも良いでしょう。自分に合う方法を取り入れてみてください。
個人事業主になるなら把握したい15項目のやることリスト
個人事業主には、誰でもなることができます。しかし、把握しておくべきことは決して少なくありません。ここからは、やることリストの15項目を一挙に紹介します。
リスト作成の際にそのまま使えるような具体的な内容になっているので、ぜひ活用してください。
1:情報の収集
個人事業主を始めるにあたって、情報収集は何よりも重要です。
情報収集と言っても、ここに列挙しているような「やること」のみを指すわけではありません。自分が始める事業についての情報収集を、しっかり行う必要があります。
業界の市場規模、トレンド、今後の見通しなど、情報収集は事業の成功や継続に大きく影響することを理解しておきましょう。
2:就業規則の確認
万が一、会社員を続けながら副業として個人事業主になる場合は、勤め先の会社の就業規則をきちんと確認しましょう。
会社によっては副業を禁止しているため、大きなトラブルに発展する可能性があります。会社員としての立場が危うくなってしまうと、元も子もありません。事前にしっかり確認しておきましょう。
3:周囲へ独立開業の意思の伝達
個人事業主として成功の鍵となるのが「集客力」です。企業と比べると資本もなく、大規模な宣伝ができるわけでもありません。現時点で持っている人脈をいかに繋げるかが、事業を成功させるために重要です。
成功に近づくためにも、周囲へ独立開業の意思はきちんと伝えておきましょう。また、会社員として勤めている企業と関連する副業を行う場合は、競合相手などから反感を買ってしまう可能性もあります。
人脈を最大限に活かすため、また無用なトラブルを避けるためにも、周囲への伝達は怠らないようにしましょう。
4:退職手続き
会社員を辞めて個人事業主になる場合は、会社できちんと退職手続きを行いましょう。
個人事業主になる方には、もともと勤めていた会社の事業に関連した事業を行う傾向があります。もし同じ業界で個人事業主をやる場合、もとの会社と揉めてしまうことは大きなリスクになるでしょう。
新しい事業に支障をきたさないよう、退職手続きは円滑に進めましょう。
5:国民健康保険への加入
会社員として社会保険に加入していた方が個人事業主になった場合、国民健康保険に切り替えなければなりません。
会社員の社会保険への加入手続きや支払い等は、会社が全て行っていました。しかし個人事業主の場合、手続きは全て自分で行う必要があります。
また、支払いも会社員が給与から天引きされるのに対し、個人事業主は自分で支払う必要があります。忘れてしまわないよう、しっかりやることリストで管理するようにしましょう。
6:国民年金への加入
個人事業主は、国民年金にも自分で加入する必要があります。
会社員であれば、厚生年金と国民年金の2つに加入していました。対して個人事業主は、厚生年金がなく国民年金のみの加入となります。個人事業主の老後の年金額が少ないと言われるのは、このためです。
将来の年金が不安な方は、国民年金に上乗せして保険料を支払い、受け取れる年金額を増やすこともできます。国民年金基金や確定拠出年金など、将来の不安をなくすためにも検討しておきましょう。
7:開業届の提出
個人事業主として事業を開始する場合、開業届を税務署に提出しなければなりません。窓口に直接提出する方法のほかに、郵送やインターネットでも提出が可能です。
期限は事業開始から1ヶ月以内となっていますので、しっかりとやることリストに入れておきましょう。
また、開業届を提出する際は以下の内容も知っておく必要があるため、確認しておきましょう。
出典:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
参照:https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/04.htm
屋号の決定
開業届を提出する際、屋号を記入する欄があります。
屋号とは事業や店舗の名前のことで、事業を行う際の呼び名を決めることが可能です。インターネットを活用する事業の場合、屋号は非常に重要な役割を果たしますので、慎重に決めましょう。
青色申告または白色申告の選択
青色申告、白色申告とは確定申告の方式のことです。青色申告の場合、白色申告よりも記帳の方法などの要件が厳格ですが、控除を受けることができるなどの優遇措置があります。
青色申告か白色申告かは、開業届を提出する際に選択することになります。青色申告を利用する場合は、別途申請書を税務署に提出する必要があるため、忘れずに準備しておきましょう。
8:家族を従業員として雇うかの考慮
青色事業専従者の給与は、一定範囲内で経費として計上することが可能です。さらに、家族を従業員として雇うと「青色事業専従者」として設定できます。
青色申告のメリットの1つとなるため、家族を雇う場合はぜひ活用しましょう。
9:開業届以外の届け出の提出
事業を開始する際に必要な書類には、開業届以外にもさまざまなものがあります。
上述した青色申告の申請書、青色事業専従者の届出書のほかに、例えば給与支払事務所等の開設の届出などがあります。
これらの制度を活用することで、円滑に事業を進めることができますので、準備すべき書類はやることリストに入れておきましょう。
10:許認可の申請
事業によっては、事業を開始するのに許可や認定が必要な業種があります。
例えば、食品や医療に関連するものや運送業など、許認可が必要な業種は意外と多く存在します。許認可の手続きや申請先などが業種によって異なりますので、事業が該当する場合は事前にしっかり調べておきましょう。
11:利用できる補助金や助成金の確認
個人事業主になるにあたって、最初の関門とも言えるのが資金調達でしょう。開業資金、運転資金に困らないよう、まずは国や地方自治体で利用できる補助金や助成金について調べましょう。
補助金や助成金の種類は多岐に渡り、よく知られていないものもたくさんあります。手続きの大変さなどもそれぞれで異なりますので、情報収集はしっかり行っておきましょう。
12:確定申告への準備
会社員としての収入のみで生計を立てていた方であれば、これまで確定申告をしたことがない方も多いでしょう。そのため、確定申告の大変さに戸惑う方は少なくありません。
通常の確定申告であれば、申告の受付期間は2~3月の1ヶ月間です。それまでに、前年の1~12月の会計処理をある程度まとめておかないと、かなり大変な思いをすることになってしまいます。
事前に記録をまとめておき、受付期間が開始したらすぐに手続きが行えるよう準備しておきましょう。
出典:申告手続の流れ|国税庁
13:事業用口座の作成
事業用の専用口座を作ることも、重要な作業です。
通常使用している口座と一緒にしてしまうと、お金の出し入れが個人用か事業用かわかりにくくなってしまいます。ミスも起こりやすくなるため、事業専用の口座を作ると良いでしょう。
屋号名で専用口座を作っておくと、振り込んでもらう際にもわかりやすくなるためおすすめです。
14:創業融資での資金調達
事業を始めて間もない間は実績も信用もなく、一般的な金融機関では融資を受けることが難しいです。そのため創業資金の調達は、個人事業主にとって悩ましい問題の1つでしょう。
個人事業主が融資を受ける方法にはいくつかありますが、有効だと言われている方法の1つが「日本政策金融公庫」からの融資です。個人事業主や中小企業の支援に積極的な政策金融機関のため、創業融資に向いています。
資金調達に困ったら、検討してみると良いでしょう。
15:独立開業後の見通しの把握
個人事業主が陥りやすいのが、見通しの甘さによる経営悪化です。
売上高はもちろんのこと、人件費や家賃、借り入れの返済や消費税の支払いなど、会社員のときには把握する必要のなかった数字を、全て把握しておく必要があります。
さらに、現時点での数字を把握するだけでなく、ある程度将来の見通しができなければ成功するのは困難です。最低でも、1年先までの見通しは把握した上で事業を開始しましょう。
個人事業主が各自で用意したいもの
ここからは、個人事業主としての活動を始めるにあたって自分で用意したいものを紹介していきます。
必ず用意しなければならないものではありませんが、事業を進めるにおいて重要な役割を果たすものばかりです。一通りチェックして揃えておくことをおすすめします。
ホームページ
近年はSNSやネットの普及に伴い、多くの人がサービスを探すときにまず、インターネットで検索をする傾向があります。そのため、現代のビジネスにおいては、ホームページを持つことは基本的かつ重要な一歩と言えます。
事業内容にもよりますが、近隣地域のみを対象にした事業でない場合は必須とも言える工程です。
自分でホームページを作ることもできますが、インターネットで検索をした際、上位に表示されなければ見てもらえません。比較的安価で作ってくれる業者も多く存在するため、プロにお願いすると良いでしょう。
名刺
個人事業主がまずやるべきことは、事業の周知です。
新しく事業を始めたことをできるだけ多くの人に知ってもらうためにも、名刺を配ることは重要です。
自分で作る方法のほかに、業者に作ってもらう方法もあります。デザインに自信がなければ、業者にコンセプトやイメージを伝えて作成してもらいましょう。
印鑑
事業を成功させるためにも、事業用の印鑑は作成するようにしましょう。
事業においては、さまざまな場面で印鑑が必要です。契約書や請求書などに使う、屋号の入った印鑑があると良いでしょう。事業専用の印鑑を使うことで、書類の格が上がり、事業への信用も得やすいためおすすめです。
ネット環境・PC
事業において、書類の作成やデータ送信を行う場合は、PCやネット環境が整っていることも必須です。
PCは、セキュリティ対策や、万が一の事態にPCが全く使えなくなることを回避するためにも、個人用とは別に事業専用のPCを持つことをおすすめします。新しく購入する場合は、経費に計上できるよう金額も確認が必要です。
加えて、データのやり取りが大きな役割を担う事業の場合は、回線速度も確認しておきましょう。遅いようなら、プロバイダの変更なども検討すると良いでしょう。
固定電話
現代では固定電話を持たず、携帯電話のみを契約している方も多いでしょう。しかし、個人事業主になるのであれば、事業の信用度を上げるためにも固定電話を持つことをおすすめします。
名刺やホームページに連絡先を載せる場合、固定電話の方が信用されやすくなります。新規に契約しても費用はそこまでかからないため、固定電話を契約しておいて損はないでしょう。
FAX
FAXも現代では使わない方も多いため、わざわざ持つ必要性を感じないという方もいるのではないでしょうか。
しかし、企業においてはまだ使っているところも多く、FAXが使えないと不便に感じる場面もあります。企業とのやり取りが多い事業であれば、あるに越したことはないでしょう。また年配の顧客とのやり取りが多い事業においても、有効です。
業務用メールアドレス
個人用とは別に、事業専用のメールアドレスを持つことも大切です。
個人用のアドレスと分けることで、メールを見落とすリスクが減り、さらにアドレスに屋号を入れることで信用度も増すでしょう。また信用度やセキュリティのために、有料で独自ドメインを作成することも有効です。
会計ソフト
初めて個人事業主を経験する方であれば、確定申告や会計処理に手間取ってしまうことも多いでしょう。
そういう方は、会計ソフトを使うことをおすすめします。初心者でも使いやすいものが揃っており、手書きで帳簿を作るのに比べてミスを犯す可能性も少なくなります。
事業の内容に合ったものや、個人事業主に特化したものを選ぶと良いでしょう。
プリンター及びスキャナー
プリンターやスキャナーがなければ、念のため準備しておくと良いでしょう。PC内でデータを保管するのは当然ですが、紙媒体で手元に保管しておくことも重要です。
新しく購入するのであれば、スキャナーと一体型のプリンターが1台あれば十分でしょう。
個人事業主になる際のやることリストを確認しよう
個人事業主は、自由に事業を展開できる一方でやることも多く、初めての方には困難に感じることも少なくないでしょう。
やることリストを活用することで業務を忘れてしまうことがなくなるだけでなく、計画的に進めることもできるようになります。初めての個人事業主になって不安な方も、やることリストが強い味方になってくれるでしょう。
やることリストは個人事業主だけでなく、フリーランスや副業として業務を行う方にも非常に有効です。ぜひ活用してみてください。
初回公開日:2024年3月29日
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
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