「個人事業主が失業保険を受給できない理由は?」
「失業保険の受給条件って?」
「再就職手当を不正受給したらどうなる?」
このように、個人事業主の失業保険受給について疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
失業保険は、失業すれば誰しも受給できるというものではありません。そういったことを知らずに自分には受給資格があると思っていると、あてにしていた金額が入ってこなくなるため、人によっては経済的に問題が発生する可能性が出てくるでしょう。
本記事では、個人事業主は失業保険をもらえないのか、再就職手当をもらう際に気をつける点についてなどを解説します。
この記事を読むことで、失業保険や再就職手当の知識が深まります。これらの制度を利用する可能性がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
個人事業主は失業保険を受給できない理由
失業保険は、会社に雇用されていた労働者が利用できる制度です。個人事業主は、自身で事業を行っていたことで、会社に雇用されている労働者ではないため、原則として雇用保険の適用範囲から外れ、失業保険を受給できません。
失業保険の受給条件
失業保険とは、一定の条件をクリアできた人が受給できる制度です。どのような人でも失業すれば失業保険を受け取れるというわけではないため、誤解のないよう受給条件を満たしているか必ずチェックしておきましょう。
「自分は失業保険を受給できる」と、失業保険をあてにしていると、受給資格がなかったときに生活が苦しくなる可能性もあります。
出典:ハローワークインターネットサービス – 雇用保険制度の概要|厚生労働省
就職先が決まっていなくて、失業状態である
失業保険は、積極的に求職活動をしているにもかかわらず、就職先が決まらず失業状態である場合に適応されます。「働きたくても働けていない状態」ということが前提となるため、求職活動をしていない場合、失業保険を受け取ることはできません。
また、受給手続きにおいて、住所地を管轄するハローワークで求職の申し込みが必要になります。ハローワークを利用して求職活動をしていない場合、失業保険を受給できません。
転職エージェントなどを利用している場合も、失業保険を受給する場合はハローワークを利用する必要があるため注意しましょう。
就職の意志がある
会社に雇用されていた労働者でも、仕事を失っただけでは失業保険を受け取る資格があるとは言えません。失業保険は再就職のための保険という理由から、就職したい意志があるかも受給の条件に入っています。
「働く気がないけれど取りあえず失業保険を受けたい」という場合、受給資格がないと見なされてしまうでしょう。その意思の確認も含めて、ハローワークで求職の申し込みをしているかが前提となります。
就職できる健康状態や環境である
就職できる健康状態や環境であるかも受給条件に含まれているため、病気や怪我など体調面が整っていない場合は、就職できる能力があると判断されません。
また、出産を控えていたり、育児のためにすぐに就職できなかったりする場合も「今就職できる状況にはない」という理由から失業保険の受給対象にはなりません。
知っておきたい失業保険の「事業開始等による受給期間の特例」とは
失業保険には、事業開始等による受給期間の特例というものがあり、この制度によって、離職後に事業を開始している場合、特例を利用できる可能性が出てきます。知らないままでいると、受給資格があるお金をもらわないまま過ごしてしまうことになりかねません。
また、2022年7月1日に、会社員だった人が起業して個人事業主になった場合、失業保険の給付を受給できる期間が、1年間から最大4年間に延長されました。この変更によっても失業保険を受けられる人は増えるでしょう。
出典:雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案概要|厚生労働省(PDF)
特例を申請するための条件
「個人事業主だから、失業保険を受給できない」と落胆していた人は、特例を申請するための条件に当てはまっていないか確認してみましょう。
失業保険の給付を受給できる期間が延びたことにより、条件に当てはまる可能性もあります。特例が適用される対象者は、以下の条件のいずれかを満たしている人です。
・退職後に事業を開始している
・退職する前から事業を開始し、退職後にその事業に専念している
・その他、管轄公共職業安定所の長が認めた者(事業開始の準備をしたが、開業しなかった人など)
特例の申請手順
特例の申請手続きは、事業スタートさせた日の翌日から2カ月以内に行いましょう。受給期間延長等申請書に開業届を添付して、住所を管轄するハローワークに提出します。
出典:雇用保険法施行規則等の一部を改正する省令案概要|厚生労働省(PDF)
個人事業主がもらえる再就職手当の基礎知識
個人事業主でも、事業開始前に雇用保険の受給資格がある場合は再就職手当をもらえます。個人事業主として事業をスタートさせて、受給期間内に雇用保険の被保険者を雇うと基本手当の支給残日数から算出される再就職手当の受給資格を得ます。
ここでは、個人事業主がもらえる再就職手当の基礎知識について見ていきましょう。具体的に再就職手当では、どの程度の金額がもらえるか把握しておきたい方はぜひチェックしてみてください
再就職手当の平均的な金額
再就職手当の平均的な金額は、失業保険の所定給付日数の支給残日数によって計算が変わってきます。
支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っている方は「基本手当日額×所定給付日数の残日数×70%という計算式で算出できます。基本手当日額は、離職する以前の6ヶ月間の給料に給付率をかけて割出されます。
支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の場合は、「基本手当日額×所定給付日数の残日数×60%」の金額になります。
再就職手当を受給するための条件
再就職手当は、失業保険の給付日数が一定以上残っていて、安定した職業に就いて条件を満たした場合に支給されるものです。失業中の求職者の制度で個人事業主は対象外となります。
しかし、失業保険の受給資格を有している、待機期間をすでに満了している、開業届を提出するタイミングは失業保険の給付後、給付制限がされていない、などの条件をクリアしていれば再就職手当は支給されます。
再就職手当を受け取る適切なタイミング
再就職手当は、指定した口座に振り込まれる形になりますが、受け取るタイミングは個人の自由になるでしょう。
再就職手当が振り込まれるのは、ハローワークに対して、就職が決まったこと、もしくは開業届を出したことを報告した後、ハローワーク側が再就職手当支給申請書を受理後審査を行い一定期間経過してからになります。
再就職手当の申請手順
再就職手当の申請手順は、離職状態となった後、ハローワークで求職の申し込みを行い、離職票を提出することになります。受給資格の決定を受けて、7日の待機期間後、雇用保険受給説明会に参加します。
その後、 開業届を提出するとハローワークに連絡して、開業届を提出する前の日に、最後の失業認定を受けましょう。そして、税務署に開業届を提出、その1ヶ月以内にハローワークで再就職手当の申請をする、という流れになります。
個人事業主が再就職手当を受け取るときに注意すべき点
最後に、個人事業主が再就職手当を受け取るときに注意すべき点について解説します。場合によっては、再就職手当を受け取れなくなるため、以下の内容はしっかりと押さえておきましょう。
廃業した後は再就職手当をもらえない
再就職手当は、失業保険を得ながら求職活動している方が受給できる手当です。個人事業主として開業していて、廃業後に求職活動をして、正社員として再就職できても、再就職手当の受給資格はないため注意しましょう。
開業届の提出時期に注意する
会社員が個人事業主になった場合、再就職手当で注意することは、開業届を税務署に提出する時期です。失業保険の受給前に開業届を提出しないようにしてください。そうすることで、廃業した後は再就職手当をもらえないという事態は防げます。
この理由は、再就職手当は失業保険の一部であり、失業保険は失業の状態にある場合に適応されることが関係しています。失業保険を受け取る前に開業届を税務署に提出していると、「失業期間がない」ということになるためです。
不正受給は罰則になる
実際に再就職手当の受給資格がなかったり、架空の届出や申告をしていたりした場合は、不正受給として罰則があります。受け取った再就職手当の返金だけではなく、不正行為で受給した金額の2倍の納付が必要となります。
金銭的にも大きな損失になり、悪質だと判断された場合は、詐欺罪として刑事事件になることもあります。社会的信用も落ち、家族にも迷惑をかけることになるでしょう。不正受給は、絶対に行わないようにしてください。
個人事業主は失業保険を受給できないことを理解しておこう
個人事業主であった場合は失業状態となっても、通常の会社員のように、失業保険など利用できないことがあります。本記事でお伝えしたとおり、基本的に個人事業主は失業保険を受給できません。
しかし、条件を満たしていれば失業保険の事業開始等による受給期間の特例や再就職手当など、受給できることもあります。開業届のタイミングで受給資格を失わないためにも、再就職手当の制度などはしっかり確認するようにしましょう。
初回公開日:2024年4月2日
監修:キャリテ編集部【株式会社エーティーエス】
株式会社エーティーエスが運営する本サイト「キャリテ」では、みなさまの「キャリア」「働く」を応援する記事を掲載しています。みなさまのキャリアアップ、より良い「働く」のために、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
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